爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「”買ってはいけない”は嘘である」日垣隆著

99年に発売され爆発的な売れ行きを見せた「買ってはいけない」はその当時から多くの批判を浴びていましたが、その中でももっとも説得力がある批判であったという日垣さんのものです。この本には、その他に当時かなりの問題となっていた環境ホルモン精子が減るという風説に対する批判、およびダイオキシン猛毒説に対する批判などが収められています。

買ってはいけない」については、私自身その当時会社勤めをしていて、その中で光栄にも?その社の製品が紹介?されてもいて、その変な主張ぶりには当惑させられたものでしたが、この本を読むとその何が変なのかというのが明確にわかります。実はそのあとになって科学的な視点からそのような批判本などを評価できるようになったということもあり、その先駆けともいえるようなこの本は記憶に残るものです。

トンでも本などといわれるようなものも多数ありますが、この「買ってはいけない」というのは極めて科学的には正しいデータを用いながら、わざと歪曲して書いているという特徴があります。もちろん著者グループはそれについては百も承知しており、どうすれば売れるかということを考えてやっているのでしょう。日垣さんはその辺を正確に糾弾しており、科学分野の経験は無いにもかかわらず、(東北大法学部卒)非常に的確かと思います。

なお、この文章は文芸春秋に掲載されたものなどをまとめたものですが、その際に「買ってはいけない」共著者の渡辺雄二から寄せられた文章も採録してあります。まったく論点が分かっていないことが明らかですが、本当に分かっていないのか、その振りをしているのか、良く分からないところです。

その他に掲載されている環境ホルモンによる精子減少などという話も昔よく言われたものですが、さすがにほとんど消え去ってしまいました。しかし、この話の基本的構造、つまり昔はほとんどまともに測られなかったものが、近年正確に、かつ頻繁に測られるようになったものについて、昔と比べてどうこうという言い方をされるものがいまだに頻発しています。PM2.5騒動などもこの構造でしょうし、実は温暖化も同様です。分析手法の進歩というのはこのところ非常に速くなっていますが、それを受け止める人々の意識は全くそれにそぐわないもののままに止まっているようです。