爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「龍鳳のくに」陳舜臣著

陳舜臣さんは神戸で生まれ、日本の教育を受けていますがエッセイで書かれているように御祖父さんから中国の教育も施されているため日中両方の文化に通じておられます。
そのような陳さんのエッセイ集ですが、第2部以降は他のところで発表されたものを集めたものですが、第1部は書き下ろしとのことです。
第1部で扱われているのは龍と鳳で、どちらも中国の皇帝を象徴する架空の動物ですが、元々の成り立ちから言うと相当差があるようです。
龍はいろいろの動物の各部を集めたようなものですが、これは元々牛、犬、魚、蛇などの動物をトーテムとして祀ってきた部族が徐々に合体し大きくなるに際し、比較的平和裏に合わさった場合に両方のトーテムも合体させるような形でデザインされてきたのでこのような複雑なものになってきたと言うことです。
それに対し、鳳は一見どこかに実際に居るような鳥の姿ですが、これは一つの強力な部族が他を一方的に従えてしまったために、トーテムもシンプルなまま残ってきたからだそうです。

中国の歴史はこのような龍鳳の絡み合いで進んできました。鳳のように中国を席巻した皇帝も統一王朝を立てしばらくすると中国文明に取り込まれて龍化してしまったと言う見方もできます。

このような話を見ると、今の日本でも企業や市町村の合併を思い起こしてしまいます。吸収合併に近い場合は大きな方の名前が残るだけですが、対等の場合は名前をずらずらと並べるようなものにもなってしまいます。一部の銀行の名前など冗談のようにしか見えません。市町村合併でも名前の付け方は難しいようで、それで合併話自体がつぶれる例も多いようです。