爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「コロニアリズムと文化財」荒井信一著

茨城大学名誉教授の国際関係史学者、荒井信一さんの著書です。

つい最近、日本の対馬の寺から仏像が盗まれ、韓国で犯人が逮捕されて仏像も見つかったと言う事件がありました。しかし、その仏像をすぐに日本に返還させないと韓国当局が決定したとのことです。

おそらくこの件は反韓と言われる人々からは「盗賊の仲間の韓国政府」とでも言われる元になっているのではないかと思いますが、その背景がこの本に書かれているような日本の植民地時代の文化財の収奪です。

豊臣秀吉朝鮮出兵時にも文化財が持ち帰られた可能性はありますが、近代の朝鮮進出以降、併合し植民地化した時代には徹底的に文化財(文書・遺跡出土品・仏像等)を日本に持ち出し、その数は何十万点にも上るようです。
それらは公権力の行使により発掘されたものもありますが、私掘によったものも多く、それは日本で売り払われたために現在も私蔵されていて実態がつかめないものも多いようです。

とはいえ、このようなコロニアリズムにおいては日本などはせいぜい模倣したにすぎず、本場のイギリスなどではエジプトやギリシャから徹底的に持ち去り、本来の場所は空っぽにしてしまったほどですから、上には上があるものです。

韓国も日本などに対し文化財の返還を求めていますが、エジプトやギリシャも同様の動きをしています。しかし、なかなか返すということにはならないようです。