爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「ローマ人の物語」塩野七生著


ローマ人の物語、全15巻(そのうち14巻は文庫本だったので40冊)を読み終えました。
ローマ建国から西ローマ帝国の滅亡まで。当時の全世界とも言える広大な国家を作り上げ維持してきたローマ人が、その面影もなく衰退して行き消滅してしまう。昔からその原因についてはあれこれ議論されてきましたが、ここまで読んできての感想で述べると、「広大に、強大になってきた原因自体が衰退の原因となった」ということかもしれません。

建国の始めから周囲の民族と戦って勝ち抜き、それでいながら敗者を自らの中に取り込み大きくなっていったということはそれ以降の各国の歴史を見てもほとんど見られない優れた面と思いますが、その結果ローマの支配層もどんどんと変化して行き、元の蛮族出身者でも元老院議員でも皇帝にすらなってしまった。それがローマというものの変化にもつながったとも言えそうです。

さらに息の根を止めたのがキリスト教化かも知れません。

直接的にはゲルマン人やフン人の侵入が大きく影響を与えたので、実際はその原因となった気候変動が原因とも言えます。

いずれにせよ、末期のローマ人の公共心の欠如は甚だしいもので、興隆期の進んで軍務や公共事業への私財投資などに取り組んだ当時と比べると同じ国とは思えないようなものです。どこがどう変わるとこうなるのか。その辺に鍵がありそうです。