爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「大崩壊”邪馬台国畿内説”」安本美典著


邪馬台国九州説の論者の安本氏の近刊です。
つい最近も奈良県箸墓古墳に初めて研究者の立ち入りを許したという意味不明のニュースが大きく報じられました。それも発掘などではなくただ入って歩くだけというものです。NHKなどでも「卑弥呼の墓かとも言われる」という触書付きでの紹介でしたが、どうも邪馬台国畿内説は権力者側とそのお友達のマスコミの好みのようです。

それに対する安本氏がかなり苛立ちながら、現状を強調したものです。九州説側の論者がいかに論争を挑んでも全く同じ土俵で受けようとせず、無視するばかりの畿内説と言えるようです。

畿内説の寄って立つところの考古学的知見がいかにいい加減な解釈のみに依拠しているか、土器の編年、鏡の種類等、おかしいと主張されているにも関わらず全く正面から答えていないようです。

そもそも卑弥呼が居たということは中国側資料の魏志倭人伝に書かれているだけで、日本側資料とは大きく異なるにも関わらず、”卑弥呼が居た”というところだけを取り上げて、他の部分は全く無視して話をあわせているようです。その手法はとても科学とは言えないものでしょう。

なお、畿内説側の主な勢力は京大のメンバーによるもののようです。自然科学系で京大出身者のノーベル賞受賞があったため、あたかも京大の雰囲気が優れているかのような言説もありますが、少なくとも考古学分野では全く状況が異なるのかも知れません。