現代人は腰痛、眼精疲労、坐骨神経痛などの病気に苦しんでいる人が多数です。
また、2型糖尿病は多くの患者を数え、それはすでに一つの社会問題となっています。
ホモ・サピエンスという、現生人類が種として確立されたのはおよそ30万年前と考えられていますが、その当時に上のような病気になっていた人はほとんどいませんでした。
もちろんほとんど獲物もえられずに栄養失調で死んだり、動物との闘いで死んだりと言った人は多かったでしょう。
しかし、現代人の多くが苦しんでいる病気とはまったく無縁でした。
原始の時代の人々は、進化で手に入れた二足歩行をフルに活かして歩き回り、狩りの獲物を求めてきました。
それは、二足歩行を始めたホモ属になってからの数百万年で適応してきた身体でした。
瞬間的に走る速さは多くの動物に及びませんでしたが、人類の利点はスタミナを活かして長い間歩いて獲物を追い詰めることでした。
彼らは特に臀筋が発達していました。
彼らの休息のポーズは、深くしゃがんだ姿勢で長くそのまま過ごすことでした。
現代人の多くはこの「深くしゃがむ」という姿勢が苦手です。(得意な人も居ますが)
そういった人類が、紀元前3万年頃から定住を始めます。
本格的な農耕は紀元前18000年頃から確認されていますが、その前段階の栽培が始まりました。
これ以降、仕事の仕方、その場合の身体の使い方、食べ物、などが劇的に変わってきます。
移動を止めたことで、身長が縮んできました。
穀物中心の食物を食べることで、歯や顎が小さくなってきました。
歯並びが悪くなり、穀物の残り滓が酸化するため虫歯ができてきます。
定住する家ができ、自然光を浴びる時間が少なくなってしまいます。
農耕化と時を同じくしてさまざまな家畜を飼うようになります。
しかし、これは動物の感染症が人間にも広がる原因になりました。
現代の多くの感染症は動物から広がってきたことが分かっています。
これも、畜産が始まらなければここまで広がるはずはありませんでした。
工業化が始まった産業革命以降の時代は、そこで働く労働者にとっては地獄のような日々でした。
長時間、危険と隣り合わせで、身体を酷使する作業を強いられました。
その厳しさは彼らの遺体にもそのまま残っています。
事故で手足が欠損したり、脊椎が歪んだままであったり、またほとんどの人は非常に短命でした。
ちょうどこの時代には、労働者階級も含めて子供を学校で教育するようになります。
しかし、そのやり方はと言えば、狭い教室の机と椅子にじっと座って話を聞くことを強制されていました。
これは、ゆくゆくは工場で働くようになった時に、おとなしく命令を聞けるような人間を養成しているだけの教育でした。
それに耐えられない子供をADHD,多動性障害と呼んで、神経的な疾患かのように考えています。
しかし、そのような強制的な着席には耐えられない方が当たり前かもしれません。
そのような奴隷的な労働は、工場の機械化などで徐々に無くなっていきました。
しかし、現代の労働者が何をしているかを見ていくと、さほど好転しているわけではありません。
ほとんどの労働者は、「ずっと座っている」わけです。
これは事務職ばかりではありません。
トラック運転手はもっとひどいことに、ずっと座って運転をしていって、その直後に荷降ろしという重労働を強いられてしまいます。
他の職業でも多かれ少なかれ座っている時間が長くなっています。
大方の人が気づいているように、これは「腰痛」の大きな原因です。
それを防ぐためには、座り続けることは仕方ないにしても、できるだけ「ウォーキング」をすることだそうです。
ほとんどの人が、「座り続けている」ことの影響として、多くの人が「肥満」してしまうことがあります。
すでに先進国だけでなく途上国でも肥満者の増加は激しくなっており、2025年には27億人が肥満になるという予測もあります。
肥満者の陥る病気で怖いのが糖尿病です。
この患者も今後は非常に増加していく危険性があります。
肥満者の増加を支えるかのように、穀物の増収は続いています。
しかし、どうも農産物はかつてより栄養分が薄くなっているようです。
これは、二酸化炭素の上昇で光合成が進み、炭水化物の含量は増加する一方、その他の栄養成分は土壌中からの吸収で変化がないためではないかと疑っています。
現代人の多くが苦しんでいる病気や苦痛は、現代人の生活そのものから生み出されているようです。
食べる量を減らし運動をすることで改善することはできるのですが、それが困難なのが人間なんでしょう。
なお、農産物の栄養減少を本書では二酸化炭素上昇に結びつけていますが、これはちょっと無理でしょう。
そんなものより遥かに強いのが消費者の好みに合わせた品種改良だと思います。