著者の信田さんは長年カウンセラーとして相談を受けてきた方です。
DVやいじめ、パワハラなどなど、人を傷つけることが大きくクローズアップされるようになってきましたが、まだまだそれは人間関係の問題であり続けているようです。
この本では主に言葉などによる心理的な傷つきというものを対象としていますが、もちろん暴力によって身体が傷つけられること、性的に傷つけられることも傷つきの一つです。
ただし、暴力などは法的に罰せられる道がありますが、言葉による心理的な傷つきはなかなか認識されず、傷つけた方に罰則がない場合も多いようです。
心理的な傷としては、トラウマやフラッシュバック、解離といった現象として現れることもあります。
心理的ではあっても、心の持ち方では解消できないような大きな傷はあります。
傷つける人も、相手を傷つけていると認識しないまま傷つける人も居ますが、DVなどは妻を苦しめ続けることが目的のような夫も数多くいます。
ただし、他者を苦しめるようなことをしてしまってもあまり認識がなく、同じことを自分が言われると簡単に傷つくこともあります。
他者に対しては鈍感、自分に対しては敏感過ぎる、そういった「困った人」も多いようです。
家庭内暴力で深く傷つく子供もいます。
その親は、外では温厚そうな顔を見せていても、家に帰ると暴君に変わります。
家族というものは親の所有物のようなものという感覚を持っています。
学校や職場、ママ友などの集団で一度疎外感を持つような状況に陥ってしまうと、なかなか抜け出せないということにもなりかねません。
このような状況を防ぐためには、一つの集団だけに属するのではなく、いくつかのバイパスを持っておくということも重要なことです。
社会人なら職場の他にサークル活動や習い事などをしてみるとかの方策を取ってみると、たとえ職場で苦しい状況になっても息抜きができるようです。
また、傷つきやすい人というのは、かえって不必要に他者と近づきがちになるということもあります。
人間関係がいつもトラブル続きという人は、この「ちょうどよい距離」の取り方が下手なのかもしれません。
ここで著者はこれを自動車運転にたとえています。
車間距離がうまく取れる人はあまり事故を起こしません。
危ない走り方をする車がいれば自分からスピードを落として離れようとします。
人間関係でも同様のことがあるようで、近づきすぎて衝突したり、極端に誰からも距離をとって誰とも親しくなれないという人は傷つきやすい人なのでしょう。
著者は若い頃に相談者として息を呑むほどの美人女性と出会ったことがありました。
著者はおそらく普通の容貌なのでしょうか、「こんな美人でスタイルが良ければそれだけで問題解決じゃないの」という思いで話を聞いたそうですが、そういったとびきりの美人という人たちは、確実にそれだけで「少数者」となり、苦しい心理状況に追い込まれることが多いようです。
子供の頃から明らかに可愛らしく美人という人は、それだけで周囲の嫉妬に囲まれ、何をしてもその目で見られるそうです。
そのため、常に孤独であり苦しみを感じているとか。
そのせいか、そういう人たちは同じようなモデル仲間などと親密な交友関係を持つそうです。
人から嫉妬されるような顔形でなくて良かった。
最後に、傷つかない方法というのはありません。
ただし、傷ついた時に傷の深さを埋めるためには、傷つけた人が絶対に悪いと思うことだそうです。
傷ついた人は、「私にも悪いところがあったのでは」と思いがちです。
それが回復を阻むことも多いので、とにかく「傷つけた人がわるいのだ」と考えることが良いということです。