戯作者とは、江戸時代後期に流行した洒落本、人情本などの通俗小説の作者を指します。
為永春水、山東京伝、十返舎一九といった人々が有名ですが、他にも多くの人々が執筆していたようです。
この本は、そういった戯作を書いていた人々の周辺を短編小説としたもので、有名な戯作者ばかりでなく名も知らない人も描かれていますが、おそらく実在の人物ばかりなんでしょう。
また、戯作者本人はすでに亡くなったあとでその家族や知人を主役として描かれたというものもあり、必ずしもそういった戯作者の絶頂期を描くというわけではなく、様々な人間模様、売れなくなって零落した後の話、などなどを書くことによって、江戸時代後半の江戸の町の雰囲気を強く感じさせるものとなっています。
有名な戯作者となるとその名前を息子や弟子が襲名するということもあったようです。
十返舎一九はその死後に弟子が次々とその名を襲名したそうですが、その人間模様を一九の未亡人や娘の口を借りて描写するというのが「半返舎一朱」という短編になっていますが、このようにかなりひねった作りの小説ばかりになっています。
戯作者の多くは武士の出身で、地方の藩の江戸屋敷勤めという者が多かったようです。
彼らはそのような文筆活動を許さない藩などにより執筆を禁止されるということもあったようで、その様子を描かれている作品もあります。
小説のあらすじ掲載は一応控えていますので、この辺にしておきますが、江戸時代の民衆の暮らしが感じられるような小品でした。