爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「歴メシ! 世界の歴史料理をおいしく食べる」遠藤雅司著

歴史の中の人たちが何をどのように食べていたのか。日本の過去の人たちのこともよく分かりませんが、外国の人々のことになると歴史上の活躍が分かっていても食生活は想像ができません。

 

そこで、歴史料理研究家という遠藤さんが様々な資料を元に料理を再現してみようということです。

とはいえ、厳密な再現というのは非常に困難ですので、まあかなりアレンジはしているようです。

 

取り上げた時代は、1古代メソポタミア、2古代ギリシア、3古代ローマ、4中世イングランド、5ルネサンス期イタリア、6フランスブルボン朝、7フランスナポレオン時代、8プロイセン王国 といったところです。

 

それぞれの時代から5種の料理を作り上げていますが、さすがに古い時代のものではそこまで忠実に作れるだけの資料も少なくかなり想像も入っているようです。

また食材も完全に同様のものが得られるわけもありませんので、その辺はかなり違いはあるのかもしれません。

しかし、一応料理としての形までは作り上げられ、実際に食べられたということですので、面白いものでしょう。

 

資料と言っても古代メソポタミア古代ギリシアでそのような料理の資料が残っているのかという疑問を持ちそうですが、例えば古代メソポタミア文明の遺跡からは、楔形文字が刻まれた粘土板が多数出土していますが、その中には料理法やその材料などが書かれたものがいくつも発見されているそうです。

 

その中には、紀元前4世紀の「メソポタミア風だし」の作り方が書かれたものがあり、炒ったウイキョウ、クレソン粒、ネナシカズラ、クミン粒を水に入れて長時間煮るというレシピが書かれていたそうです。

まだハーブの類は使われていませんが、このスープでラム肉を煮ると食材の味が引き出され上品な味になるそうです。

 

 

中世ヨーロッパでは、王や貴族は肉類が食べられ、また非常に高価であった香辛料類を大量に使うといった富を誇示するような料理があったそうです。野菜としては、希少価値のあるアスパラガスやアーティチョークだけを食べるような習慣でした。

それにひきかえ、庶民は野菜などしか食べることができず、貴族からは「野菜食い」といって軽蔑されていたそうです。

しかし、ルネサンス期になるとイタリアなどの先進地域では、貴族階級でも野菜を食べることの健康への意味が認識されるようになります。

これは、上流階級でも多く野菜を摂っていた古代ローマの習慣を見直すところから明らかになってきました。

現在でも食べられている「ミネストローネ(野菜スープ)」などもこの時期から食べられるようになってきました。

 

料理の作り方、味という点から見て、中世と大きく変わって現代につながるものになってきたのは、18世紀のフランス宮廷料理からだそうです。

具体的には、ソースが大きく進化しました。

この時代にようやくソースそのものが仕込まれるようになり、マヨネーズソース、ホワイトソース、デミグラスソースなどが誕生します。

また、ソースなどのベースとなる「フォン」も発明されます。フォンドボー、フォンドポワソンなどが生まれ、グランドキュイジーヌと呼ばれる高級フランス料理の骨格ができたのがこの時期でした。

 

また、大航海時代以降、新大陸をはじめとする世界各国から持ち帰られた多くの食材が広範囲に栽培されるようになったのもこの時代であり、ジャガイモやトマトといった食材が料理のバラエティーを大きく広げることになりました。

 

歴史料理の再現、厳密性は劣るかもしれませんが、実際に作られた料理の写真を見るとなにか遠い昔の食卓を想像できるような気がして面白いものでした。

 

歴メシ!  世界の歴史料理をおいしく食べる

歴メシ! 世界の歴史料理をおいしく食べる