爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「食品廃棄の裏側」石渡正佳著

2016年1月に発覚した、愛知県の産廃業者ダイコーによる廃棄冷凍カツの横流し事件は大きなニュースになり、連日の報道の量も凄まじいものでした。

しかし、元産廃Gメン(千葉県産廃行政担当職員)であった著者の石渡さんはこれは氷山の一角に過ぎないと感じたそうです。

食品メーカーの廃棄食品リサイクル率は95%と言われていますが、そのような処理はとうてい不可能であることは業者の現状を見れば明らかです。

そういった廃棄業者の内情を綴った本書を読めば、他にも同様の事例はいくらでもありそうだということが理解できます。

 

食品廃棄物のリサイクルには、まず人間の食べる食品に再加工できる場合があります。

これは適法であればもっとも良いリサイクルといえますが、冷凍カツの場合は困ったことになりました。

他には、「飼料化」(家畜用の飼料に加工)、「肥料化」(農地に撒く)、「燃料化」(そのまま、あるいは加工して燃焼させる)、「材料化」(細かく分解して有用な成分を取り出す)といった方向があります。

しかし、それぞれの方法には特色と問題点があり、たとえば炭水化物の多いものは肥料化は難しく、また塩分や脂肪分が多いものは飼料化が難しいと言ったことがあり、それを上手く分けられなければ焼却して熱エネルギーを取るくらいしかできません。

それも塩分で装置が損傷するという難点があります。

 

肥料化する施設は非常に数も多いのですが、それがまともに処理を行っているかといえばそうではなく、ほとんどの施設は十分な肥料化が行われずに、結局は農地造成工事での不法投棄になっていることが多いようです。

 

問題を起こしたダイコーは産業廃棄物処理業者であり、食品リサイクルの登録再生利用業者でした。しかし、その処理能力は乏しく、大量の廃棄物を受け入れれば不法投棄するしかない状態でした。

ダイコーに産廃処理を依頼した食品企業は、問題となったCoCo壱番屋だけでなく有名メーカーも多数あったのですが、彼らも実態を知らずに被害者だと言われました。

しかし、著者に言わせればダイコーの処理能力が不足しているのは明白であり、それを見抜けなかった食品メーカーも決して責任を免れないということです。

 

廃棄物には区分けがあり、一般廃棄物(一廃)、産業廃棄物(産廃)そして一廃にも産廃にも入らないものが「二廃」など、あまり一般には知られていない用語を使っての区分けがあり、それぞれで処理業者や管轄が違うなどという知識も得られました。

 

ダイコーの不正問題も、これが関わっており、産廃として考えて糾弾されているものが、一廃であれば違法性も別のところに発生するということです。

 

産廃には錬金術とでも言うべき抜け穴があり、「処理しない処理業」なるものも存在しそれが左から右へ移動させて投棄するだけで金になり、しかも別に違法にもならないという方法もあるようです。

 

食品廃棄物というものに関しては魑魅魍魎がはびこる中で様々なものがうごめいており、そこで金が動き回っているような印象を受けました。

冷凍カツ事件などは本当に氷山の一角ということでしょう。

とんでもない話です。

 

産廃Gメンが見た 食品廃棄の裏側

産廃Gメンが見た 食品廃棄の裏側