マイクロプラスチックなどと言うゴミが海に大量に漂っていると言われています。
しかし海を汚染しているゴミと言うものは今に始まったものではなく、かなり以前から問題となっていました。
この本は2007年の出版ですが、それまでの情報だとしても相当な汚染であることは間違いなく、おそらくそれからほとんど改善されることはなかったということでしょう。
本書冒頭は日本各地の大量のゴミ漂着の状況を描写しています。
それは大都会近郊だけでなく、知床、対馬といった都会からはるか離れたところでも同様で、日本全国の海岸が漂着ゴミで覆われているようです。
このような海岸へ漂着するゴミの発生源を調査すると、そのほとんどが陸上からだということが分かります。
およそ8割以上が陸上で投棄されたり漏れ出したりといったもので、かつてのように船の上から投げ捨てたというイメージとは全く異なります。
そういったゴミが河川の流れなどに乗って海に到達し、そこからは海の水などの流れに乗って世界中をめぐることとなります。
これには、「風圧流」「吹送流」「海流」「潮流」といった海の流れに従って漂い、それが海岸や島に吹き寄せられて打ち寄せられます。
漂着ゴミが問題化したのはかなり古くからで、多くの調査も行われています。
1993年、そして本書出版の直前の2004年のデータを比べても多くの点で相違がみられます。
1993年では多い方からでは、たばこのフィルター、発泡スチロール破片、飲料缶といったものでしたが、2004年では1993年ベスト10に入っていなかった食品包装・容器が入ってきます。
さらに2004年にはプラスチック原料のペレットが多くなっています。
この10年ほどの間にも、食品包装用のプラスチックが増加したことが分かります。
また、ペレットが顕著に増加しているのも特徴的ですが、これはプラスチック工場からの漏れ出し以外にはありません。
この管理の甘さが多くのプラゴミの原因ともなっています。
またこの時点で顕著なのが、注射器、釣り針、ガラス片などの危険なゴミが増加していることです。
中には針の付いたままの注射器もあり、適当なガラス瓶などに注射針を入れて廃棄されているものもあり、きちんとした処理がされていないことが分かります。
こういった危険ゴミはボランティアで海岸清掃をする場合にも大きな問題となり、参加者に十分に注意喚起を行う必要があります。
漂着ゴミの清掃を誰がやるかといった制度の立ち遅れは大きく、公的にそれを実施すると言った法律などはありません。
都会近くや有名観光地であればボランティアも集まるかもしれませんが、離島やへき地ではそれも期待できません。
そのようなボランティアも毎週集まるわけにもいかず、実際にはほとんどゴミ回収は進みません。
さらに、集めたゴミを処分するにも費用がかかり、ボランティア団体にゴミ処理費用の請求が来たこともあったとか。
こういった費用負担の制度もできていません。
海岸に漂着したゴミを観察し、それがどこから来たかを調べると言ったことも行なわれています。
南西諸島や西日本では中国、韓国、台湾、北日本ではロシアからといったことが分かるゴミも多くなっています。
しかしそれらの国が違法投棄が多いということもあるでしょうが、実際には日本から流れ出たゴミも太平洋沿岸の諸国に大量に流れ出しているというのが現実です。
本書最後は「進みだしたゴミ対策」と題されていますが、どうも見たところそれほど進んでいるようにも見えません。
生分解性プラスチックが解決のカギとされていますが、今に至っても大したことにはなっていないようです。
事態はさらに悪化しているということでしょう。