キリスト教の歴史というと、高校の世界史で習ったようにその起源のイエスキリスト、古代ローマ帝国での弾圧と国教化、そこから飛んでローマ教皇と世俗政権との争い、そしてプロテスタントの宗教改革といった程度の知識というのが普通ではないでしょうか。
しかしそれだけだと現在のキリスト教の情勢や勢力図といったものが何も分かりません。
アメリカで強大な勢力となる福音派とは何か、東欧やロシアの正教会とは何か、日本の政界を支配している統一教会はキリスト教なのか、等々の疑問はこのざっと歴史を「鳥瞰した」本で判るかもしれません。
というわけで本書の構成はキリスト教の起源から発展まで多くの事項を扱っています。
「キリスト教の誕生」「新約聖書と古代キリスト教会」「ヨーロッパ世界」「東方正教会(イースタン・オーソドックス)」「イスラムの勃興と東西教会の分裂」「ローマカトリック教会の発展と宗教改革前夜」「宗教改革」「北アメリカ大陸のキリスト教」「宗教改革後のヨーロッパ」「帝国主義時代のキリスト教」「宣教のパラダイム転換と教会一致(エキュメニカル)運動」
となっていますが、特に最後の数章はほとんど知らないことだったと言えます。
どうしてもその後の経過から西のローマの教会に目が向きますが、実際には東ローマ帝国の教会というものが大きな存在感があったようです。
東ローマ帝国ではコンスタンティヌス1世のもとでキリスト教と国家は一体となり皇帝が教皇と一体化しました。
これを皇帝教皇主義と言うそうです。
これがその後ロシアに受け継がれることとなりました。
16世紀にヨーロッパ各国で起こった宗教改革と時を同じくしてイングランドでも宗教改革が起こりました。
時の王ヘンリー八世は王権強化の様々な方策を取りましたが、その中の一つが宗教改革でした。
ただしそのきっかけは王妃キャサリンとの結婚解消問題であり、カトリックであった王妃が邪魔になったヘンリーはその結婚を無効とするようローマ教皇に申し立てたのですが、それが得られなかったので宗教改革を起こしたのでした。
その結果、勝手に作ったイングランド教会から結婚無効の宣言を受けたヘンリーはアン・ブーリンとすぐに結婚しました。
しかしその後王が交代するとカトリックに揺れ戻るなど混乱したのですが、ヘンリーの娘エリザベス一世が即位しようやく宗教解決となりました。
アメリカのキリスト教諸派の中で力を持つのが福音派で、これは宗教右派ともキリスト教原理主義とも言われます。
ごく最近、1980年代からアメリカで新保守主義が力を得たのを背景に福音派と原理主義から生まれたものだということです。
ただしその中には多くのグループがあり、テレビ伝道師などと言う人も大きな影響力を持ちます。
彼らは独特の保守的世界観に基づき、家族的価値、妊娠中絶、LGBTQなどのジェンダー問題、黒人の地位、ムスリムへの姿勢などの社会的問題に対し明白な右派的立場を取り、主に共和党右派の政治家と結んで力を伸ばしています。
トランプ再選でさらに力を増す可能性があります。
予想以上に知らないことばかりが出てきました。