爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「老後破産 長寿という悪夢」NHKスペシャル取材班

高齢者や低収入勤労者の状況は厳しいものがあります。

NHKではそういった人々の取材を重ねNHKスペシャルで何本か番組を放映しました。

その中の一つ「老後破産」についてを書籍として出版したものです。

 

数多くの人々に取材をしていますが、独居高齢者、要介護高齢者、社会保障制度の問題点、地方の老後破産、そして老後破産予備軍というように区分して示しています。

 

紹介されている人々の収入および支出の状況は金額まで詳細に示されていますが、想像を絶するほどの厳しさです。

食費もほとんどかけられないために毎日冷や麦しか食べていないとか、電気も止められているとか。

年金制度や生活保護制度の落とし穴があちこちに大きく開いており、そこに陥る人が数多いことが分かります。

 

国民年金だけであれば満額貰えたとしても月額6万5千円あまり。

これで都会でアパートを借りたらほとんど部屋代だけで終わりです。

しかもその年金すら掛け金が払えなかったり、雇用者がその手続きを怠っていたために年金が貰えないという場合もあるようで、そうなるとほとんど無収入です。

 

年金が少なく生活に困るなら生活保護を受けるべきなのですが、それもさまざまな状況で貰っていない場合があります。

本人が嫌がってという場合も多いのですが、それ以上に生活保護の情報がほとんど得られないようになっているとしか思えないようです。

年金を貰っていたら生活保護が受けられないとか、持ち家があると受けられないとか。

正確にはそのようなことは無く、部分的な保護は受けられる場合が多いようですが、行政もそれを積極的には説明しようとしないようです。

また貯金があると受けられないというのは間違いなく、今持っている貯金を使い果たしたら来てくださいと言われてあきらめる人も多いとか。

 

少ない年金であっても、老夫婦二人で貰っていた場合はなんとか生活できていたという人も、その一方が亡くなった時には途端に厳しい状態になります。

一人でも住居費は変わらずかかりますし、光熱費水道費なども変わりません。

そしてその頃には健康状態も悪化し医者にかかることも増えるとあっては、生活していくのも不可能に近くなります。

長生きするということが幸せどころか、多くの人が早く死にたいと言うようになります。

 

介護サービスも色々と数だけは増えましたが、それを受けるためには個人負担が必要です。

これも生活苦の人にとってはわずかな金額のようでも重い支出となり、サービスをあきらめるしかありません。

 

国民年金などの制度が作られたのは1961年でした。

その頃にはまだ子や孫と一緒に暮らす三世代同居率が高く、老人の年金は小遣いのようなものでした。

1980年でも三世代同居率が60%だったのですが、2013年には10%まで下がっているそうです。

制度導入時には年寄りの小遣いだったもので、現在は年寄りがそれですべてを賄わなければならなくなっています。

その年金がさらに減額されていく。

もはやうまく行かないのは明白でしょう。

 

厳しいのは年金暮らしの老人だけでなくその子ども世代も同様です。

厳しい社会情勢で失業して親の元へ戻ってくる中年の子どももいるのですが、それが親の年金で暮らしているという例が多数見られます。

親が死ねばその年金も無くなり、さらに厳しい経済状態に置かれることになります。

 

2013年という少し前の状況でしたが、現在でも決して好転はしてないはずです。

このようなことを放置して一般受けだけを狙って「子育て世代の優遇」などと言ってもどうしようもないでしょう。

我が家も今のところは年金だけでなんとかやっていますが、健康状態が厳しくなればそれもどうなるか。