爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「時代小説の戦後史 柴田錬三郎から隆慶一郎まで」縄田一雄著

著者の縄田さんは文芸評論家として活躍していますが、特に対象としているのが時代小説ということです。

この本では時代小説の中でも戦中派と言われる世代の作家が書いたものを取り上げています。

その作家が、柴田錬三郎五味康祐山田風太郎隆慶一郎の4人ですが、いずれも大正末の生まれで戦争中には大人となっていた戦中派と言われる世代の人たちです。

従軍体験もあり、柴田錬三郎は戦地に向かう輸送船が撃沈されてバシー海峡で長時間漂流するということもありました。

 

縄田さんはそれら作家の代表作を選び、それについて詳細に解析していきます。

柴田錬三郎は「眠狂四郎」、五味康祐は「柳生武芸帳」、山田風太郎は「柳生忍法帖」、隆慶一郎は「死ぬことと見つけたり」といったものです。

 

柴田錬三郎は一般的には「剣豪作家」として見られがちです。

しかしそういった作品を書いた時より以前には現代小説でもベストセラーを生み出し、それ以前に三田文学の同人であり、編集者や批評家としても活躍していました。

しかしある時期から大衆作家として専念することとなりました。

そこには虚構に命を賭けるという、ものであり、そこに眠狂四郎が生まれたというものです。

そして眠狂四郎の中にバシー海峡での体験が含まれているとみています。

 

私の父親もこういった時代小説が好きで、書棚にはそういった本が並んでおり、隠れて読んだ覚えがあります。

庶民向けの本のように見え、しかしその奥にはいろいろなものが隠されていたのでしょう。