爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「『きめ方』の論理」佐伯胖著

著者の佐伯さんは東京大学名誉教授、認知心理学者ということですが、本書は佐伯さんとしてはかなり早い時期の著書であり1980年の出版です。

題名は平易な言葉を使っていますが、学者的な言葉でいえば「社会的決定理論」についての本であり、読むほうもその心構えをしてからでなければ跳ね返されそうです。

 

最初の部分では、政治などにおける「投票による決定」といった方面から始まります。

選挙による決定が民主主義だといったことが一般的な概念となっていますが、これもそんなに単純な話ではなく、多くの問題点を含むものです。

とても与党政治家が言うような「多数派は何をやっても良い」などということは言えないものです。

章の題となっているように、「多数決原理の矛盾」「単記投票方式の矛盾」などと矛盾だらけのようです。

海外の選挙では「上位2者の決選投票」という投票方法を取る国も見られますが、一発の投票でどんなに得票率が低くても当選とするような乱暴な方式よりは少しマシかもしれませんが、それでも大きな矛盾が起きてしまうことがあるようです。

本書はさらに「民主的な決定方式」というものは存在するかとどんどんと混乱を深めるようです。

 

その後はゲーム理論にも触れながら、「社会的決定」の論理と倫理といった方向に話は進んでいきますが、かなり高度な学術的内容となっていますので、簡単に分かるといったものではなくなっていきます。

まあ専門の大学生の教科書といったものかと思います。

ちょっとかじりついたけれど振り落とされたといった読後感でしょうか。