現状の日本の選挙制度は最悪であるということは、ここでも繰り返し述べてきました。
sohujojo.hatenablog.comあの、自分の議員という身分の保持だけが望みのような連中に、選挙制度を決めさせる事自体、「泥棒に刑法を決めさせるようなもの」と思います。
とはいえ、他の国の選挙制度と言うものがどうなっているのか。
切れ切れに、各種報道で知ることはありますが、系統的に明確に説明されたものを見たことがありませんでした。
本書は、「世界の」といっても限られた先進国のものだけですが、簡潔に手際よくまとめられており、「最良の」選挙制度がどこかということには答えられずとも、「少しはマシ」なのはどこといった程度のことは分かるようになっています。
ただし、「最良の選挙制度」などというものはどこにもないとすれば、本書はこれで十分とも言えます。
民主主義と言うものを支える一番の制度が選挙でしょう。
古代ギリシアのように、直接民主政で住民が全員集まってワイワイ決めるということが不可能な現代では、何らかの方法で民衆の意志を表さなければなりません。
民衆の意志を代弁する議員や首長を投票で決める、その選挙制度に民主制の成否もかかっていると言えます。
それを各国どのように運営しているのか、本書では、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなど(それとなぜか中国)の制度と現状を解説しています。
かつて、日本でも衆議院の選挙制度改革が行われ、地上最悪とも言える「小選挙区比例代表並立制」を採用しましたが、その際あたかも小選挙区制が世界標準でもあるかのような宣伝が為されました。
これもとんでもない話で、小選挙区制が採用されている国もごく一部、しかもその詳細も日本のものとは大きな差があるようです。
アメリカの大統領選については、それでもある程度の報道が為されているので、ここでは省略します。
民主主義の発露としての議会政治の母国とも言える、イギリスでは二院制をとっており貴族院(上院・第2院)と庶民院(下院・第1院)からなります。
貴族院は貴族および聖職者に限られており、規定上も庶民院優先となっています。
庶民院の過半数を占めた政党の党首が首相に任命されるという、議院内閣制をとっています。
その選挙制度は、現行では単純小選挙区制ですが、歴史的には各選挙区から2名を選出し投票も完全連記制と言う方式が取られていました。小選挙区制となったのは19世紀からです。
ドイツは、16のラントからなる連邦国家ですが、国家全体を代表する連邦政府および連邦議会を持ち、連邦大統領は存在しますが儀礼的・形式的な機能のみを持つ国家元首であり、政府の代表は連邦首相です。
ドイツ連邦の連邦議会は2院制で連邦議会と連邦参議院とがありますが、国民の直接選挙で選ばれるのは連邦議会のみで、連邦参議院はラントからの任命制となっています。
ドイツの連邦議会の選挙制度が「小選挙区比例代表併用制」です。
この名前だけ聞けば、日本の「小選挙区比例代表並立制」と類似しているかのように見えますが、中身は全く異なります。
本質的には「比例代表制」が優先しています。
選挙の際、投票者は自らの選挙区の立候補者1名の名と、政党の名を記入します。
そして、集計の際はまず政党ごとの投票数を全国で積算し、それに応じて政党別の当選者数を決定します。
その後、各立候補者の得票数を集計し、政党ごとの当選者数にしたがって多い方から当選議員を確定するということになります。
日本のように、小選挙区で落選しても比例代表で復活などという議員になりたい病患者救済用の制度ではありません。
本書には「中国」の項もあります。
最初に書かれているように「中国にも選挙なんてあるの」と言うのが普通の反応でしょうか。
もちろん、共産党独裁の政体であり、全国の選挙というものはありませんが、地方レベルでは選挙があります。
それは最末端の、郷鎮クラスと、その一つ上の県クラスの人民代表大会の代表選出の選挙だけだということです。
各国の選挙制度について記述されていましたが、私の知りたかった「選挙制度は誰が決めているのか、その選挙制度で選ばれた議員なのか」ということについてははっきりと記述はないようでした。おそらくそうでしょう。
どこの国でもこの問題はあると思います。
それにしても、小選挙区制でも単純小選挙区制や、2回投票制小選挙区制ならまだしも、日本の現行の「敗者復活あり」の小選挙区比例代表並立制というのが、世界でもまれなほどの悪制度ということは分かりました。