爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「酒について」キングズレー・エイミス著

著者のキングズレー・エイミスはイギリスの小説家、戦後に活動を始めて当時の世相を映し、「怒れる若者たち」と呼ばれていたそうです。

しかしその教養はかなりのものらしく、それは好きだったと思われる酒についても見て取れます。

そういった、「酒について」の知識を思う存分ひけらかし?いや披露しています。

この本が書かれたのは1972年、もう50年も前のことですがその内容は時代の変化で現実と少しは食い違っていることもあるかもしれませんが、古びた感じは受けません。

いや、酒を取り巻く環境が徐々に悪化している中で、かつての良き時代の名残を感じさせるものかもしれません。

 

内容は販売されている酒の種類だけにとどまらず、酒のための道具類(グラス、戸棚、そこに入れておくたまに使うだけのカクテル用のリキュールなど)、「けちんぼのためのガイド」(当時はホームパーティが盛んだったようで、その時に金を掛けずに豪勢に見える方法など)、そして二日酔いについてなど様々です。

 

貨幣価値もかなり変わっているでしょうが、当時のポンドでの酒の値段なども詳しく書かれています。

おそらく当時の日本よりはるかに安くワインやウイスキーなどが買えたのでしょう。

また、「近所の酒屋で信頼できるところを探す」などと書かれており、まだそういった知識を持ちプロ意識に溢れた酒屋というものが存在していたのでしょう。

 

なお、訳者は林節男さんですがその他に内容の解説として吉行淳之介氏がエッセー風に書いているのも面白いところです。

吉行氏はエイミスとほぼ同年代、戦後にはすでに大人だったため戦後の食糧難時代の酒事情が日本とイギリスでどのように違うのか興味があったようです。

カストリなどという怪しい酒も嗜んだ吉行氏ほどではないようですが、エイミスもやはり色々な体験をしていたようです。

 

有り余るほどの知識と教養を、イギリス流のユーモアとウィットに包んで披露されています。

まあ、知ったかぶりと言われるかもしれませんが。