井上ひさしさんは数々の小説作品の他にも戯曲も発表していましたが、初期にはコントの台本を書いていたこともありました。
その当時人気のあった「てんぷくトリオ」の台本を数多く執筆しており、この本もそれをまとめたものの一つです。
てんぷくトリオは、三波伸介、戸塚睦夫、伊東四朗の3人で、スピーディな展開や抜群のセンスで人気を集め、1960年代から1970年代初めにかけて活躍していましたが、戸塚の急逝で活動を終えました。
三波伸介もその後亡くなりましたが、伊東は今でも活躍しています。
薄い文庫本ですが、この中に43篇のコント台本が収録されており、おそらくコントとしても短いものだったと思います。
実際に舞台で演じられたものの記憶は無いのですが、台本を読むだけで想像はできます。
3人で演じることが前提で書かれており、その役名は「客A、客B、代書屋」とか「社長、演出家、俳優」、「親分、子分、社員」となっていますが、そのどれが三波でどれが戸塚、伊東であるのか、すぐに分かるところがすごい。
大活躍だったてんぷくトリオですが、その陰には井上ひさしの才能もあったのだということでしょう。