現在も人類全体に関わるような様々な危機に見舞われていますが、これまでの歴史の中でも一つの文明が壊滅するような危機がいくつもやってきました。
そのような危機の歴史を知っておけば、これからのそれに対処できるのかどうか。
文明が滅んだという歴史は、程度の差はあれいくつでも数えることができます。
強大な軍事力で近隣を圧倒したアッシリア帝国の崩壊。
また世界中でこれまでにも何度ものパンデミックに襲われ、人口の半分近くを失うということも起きています。
さらに現代最大の危機は核兵器でしょう。
核抑止力などと言っていますが、その開発当初から使うか使わないかの瀬戸際で使われたのが広島長崎、そして今までのところはそれ以外には使われていません。
第1章は「厳しい(タフな)時代は強い(タフな)人間をつくるのか?」といった題で、危機とはあまり関係ないかのように感じますが、戦争や窮乏、疫病で苦しんだ時代の人々は生き残っていればたしかにタフな人間となったのでしょう。
スパルタ人も有名なポリスでの教育が盛んだった頃は確かにタフな人間となったのでしょうが、その後すぐにタフとは言えなくなり、その後衰退しました。
今の人間はタフとは程遠い軟弱人間ばかりのようですが、これから先の戦争はテレビゲームのようなものかもしれず、現在一日中ゲームで遊んでいるかのような子どもたちは実は戦争の訓練をしているのかもしれません。
疫病の流行、パンデミックは何度も人類社会を危機に陥れました。
古代ローマで猛威を奮ったユスティニアヌスの疫病はペストだったと推測されていますが、世界で1億人が死亡したと言われています。
その800年後、アジアから始まったと言われるペストの流行はすでに世界的に移動が始まっていたためにそれに伴って世界中に蔓延しました。
この犠牲者も諸説ありますが少なくとも7500万人と言われています。
地域によってはほとんど全滅のところもありました。
しかし生き残った人々にとってはそれまでの中世の封建社会で農奴の身分に固定されていた農民たちが急激に自由を獲得するようになるなど、その後の社会の発展のためになったとも考えられます。
20世紀になって、第1次世界大戦のさなかに流行したスペイン風邪は死亡者の多くが若者だったということもあり、社会的に大きな影響を作り出しました。
その死者は数千万人と言われ、当時の世界人口の5%にあたります。
核兵器の恐怖、そしてそれが実際に使われた広島長崎についても詳しく語られています。
ただし、それが市民まで殺害した無差別爆撃にあたるということにも触れてありますが、それに先立つ各国の無差別爆撃も考えなければいけません。
ゲルニカから始まり、ロンドン空襲、それに対してのドイツや日本の各都市に対する無差別爆撃が行われました。
それ以前に国際法に関する会議で非戦闘員に対する攻撃は控えるということになっていたにも関わらず、すべての交戦国がそれを無視することになりました。
アメリカは原爆を投下したことを、それ以上の日本の抗戦意欲を削ぐためと称していますが、実際には原爆投下の後にも東京などに大規模な都市爆撃を行っています。
第二次大戦後にも核爆弾使用の危機は何度もありました。
持っている兵器を使わずに戦争を長引かせ、自国兵士を失うということに対する反対意見も多かったのですが、朝鮮戦争でもベルリン封鎖でも何とか核兵器使用を止めました。
最大の危機はキューバ危機だったのですが、これもギリギリで止まりました。
実際にキューバ配備の核兵器がアメリカを攻撃できたのかどうかもあやふやですが、もしもと言う怖れだけでも先制攻撃が起こり得た事態だったそうです。
この本はもちろん新型コロナウイルスパンデミック、そしてロシアのウクライナ侵攻の前の出版ですが、それも書かれていたかのように感じさせるものでした。