高校の日本史では必ず習ったはずの「歎異抄」ですが、短い文章とは言えその全文を読んだという人はほとんど居ないでしょう。
この本は原文とその解説、さらに現代語訳を付すというものですが、昭和29年に初版発行という本ですので、「現代語訳」といってもかなり以前の「現代語」です。
訳注を書いた梅原真隆さんという方は富山県の浄土真宗のお寺の出身ですが、その後は龍谷大学教授や京都市議会議員、参議院議員にもなったという、学識も政治経歴もかなり深い方だったようです。
歎異抄を書いた人は誰かという点はまだ定説というものが無いようですが、本書でも採られている説が唯円房という親鸞の弟子だというもので、この説が大勢となっています。
ただし、唯円房という名の弟子は二人おり、鳥喰の唯円房、河和田の唯円房と言われてたのですが、この河和田の唯円房が歎異抄を書いたとされています。
この歎異抄が書かれたのは親鸞死後かなりの年月が経過してからのようです。
直後はまとまっていた浄土真宗の宗団も徐々に別れ出し、その主張にも様々な異説が出るようになりました。
そういった風潮に親鸞の直弟子であった唯円房が憂い、異説を嘆く、すなわち「歎異抄」を書いたということです。
なお親鸞といえば誰もが知っている、「善人なおもて往生す、いわんや悪人をや」という言葉はこの第3条にあります。
なお、歎異抄は全部で18条の文章がありますが、前半の10条は親鸞の言葉が直接書かれており、後半の8条は「異説に対する批判」が書かれています。
ただし、あくまでも唯円房の考える親鸞の言葉であり、親鸞自身の考えとは若干違いがあるということも言われているようです。
今から読むのであればもっと分かりやすい解説本がたくさん出ています。