商品の名付けというものは重要であり、同じような品質性能の商品でもその名前で売れ行きが全く違うということもよくありそうです。
本書はコピーライターとして活躍しながらネーミングというものの重要性にも早くから着目し、数々の話題になったネーミング作者としても有名となった岩永さんが、自らのネーミング作品も含め、世の中のネーミングの潮流、名作などを時代を追って解説しました。
広告というものも商品を売る際には大きな意味を持ちますが、写真や映像、キャッチフレーズを駆使して広告を作り上げていっても、その中でその商品の名前、ネーミングというものがもっとも重要とも言えるものです。
広告でアピールしたいモノ・コトというものがネーミングそのものであるということです。
商品の包装を考えても、色々なデザイン、ロゴ、配色などがありますが、その中心に座るのがネーミングです。
ネーミングなしにはパッケージは始まらない。
それほど重要なものがネーミングです。
ネーミングというものの今昔から説き始めます。
かつて、日本海軍の艦船のネーミングには驚くほどの体系化がありました。
戦艦はすべて旧国名(武蔵、大和、陸奥)、第一巡洋艦は山の名前(赤城、鳥海)第二巡洋艦は川の名前(天龍、利根、最上)
さらに駆逐艦には雪の名前(白雪、初雪)、雲の名前(群雲、東雲)などなど。
このようなネーミングシステムを作ったのは日本海軍の父といわれた山本権兵衛だったそうです。
著者がネーミングを考えることを仕事としだした最初は、六本木のスナックバーの名前を考えるよう依頼された、1970年代のことでした。
「LOS COS MOS」と名付けたのが最初のネーミング作品だったそうです。
その他、著者の手掛けたネーミングで有名なものは「日立洗濯機からまん棒」「東急BUNKAMURA」「日清オイリオ」といったものがあるそうです。
語り掛ける言葉そのままを商品名としたものも印象的なものでした。
「ごはんですよ」というのは海苔の佃煮の商品名ですが、はやくも1970年代にはできています。
これはその会社の社長の発案だったそうですが、このような「話し言葉ネーミング」というものは他にもいくつもできていきます。
「おーいお茶」「あ、あれたべよ」「甘栗むいちゃいました」など、加工食品分野で特に多かったようですが、他の分野にも広がって行きます。
特徴的な漢字を使ったり、記号そのままを使ったり、アルファベッドを使うものの和語そのものだったり、色々な工夫を凝らしてネーミングを考えていきます。
最終章では著者の経験から「ネーミングの作り方」を簡単にまとめてあります。
まずその商品の実体を把握し、マーケティング・コンセプトを把握。
キーワードを検索して関連する言葉を見回すこと。
そして忘れてはいけないのが商品登録されている言葉をチェックし重ならないようにすること。
同じカテゴリーで似たネーミングは認められないので、早い時期からきちんと確認しておくべきだそうです。
ネーミングの重要性は重々承知してはいるのですが、難しいものでしょう。
どのようなものが売れるネーミングなのか。
結局、他社の製品で印象的なもののアイディアを頂くということも多いように感じます。