古代のメソポタミア文明では楔形文字が発明され、それを書いた粘土板が数多く発掘されました。
その多くは実用的な文書だったのですが、中には物語を描き残したものもありました。
この本はそういった物語をできるだけ復元し意味の通る形にしたものです。
書物という形でもなく、粘土板が並んでいるだけですので話の通る形にするというのも大変なことだったのでしょうが、一部揃わない所は大胆に補うということもされているようです。
なお、粘土板に楔形文字という形態はメソポタミア文明の中で生まれ発達したものですが、その後周辺の民族にも伝わりました。
この本でもハッティ(ヒッタイト)、カナアンの物語が載せられていますが、ハッティは小アジアのアーリア人、カナアンはパレスチナ付近に住んでいたセム人です。
したがって、文書の形態としてはバビロニアと同じだったのですが、解読にはその言語を推定することから始まったようです。
「世界最古」と題されていますが、もちろんそれ以前にも物語はあったのかもしれません。
しかし、当時の記述がそのまま残っていたという点では間違いなく現存の最古の物語だということでしょう。
物語はその後周辺の民族に形を変えながら伝わっていきましたので、そこに登場する「ギルガメッシュ」などと言う名前は聞いたことはあります。
ギルガメシュはウルクの町に住んでいた英雄ですが「3分の2は神、3分の1は人間」だったそうです。
なぜ3分になるのか不思議なところですが、当時の感覚なのでしょうか。
ギルガメシュは王となり、エンキドゥを盟友としますが、フンババという怪物と戦いに行きます。
4000年も前の話なのでしょうが、含まれているエピソードはどこかで聞いたことがあるものばかりです。
さまざまなところで語られる物語はこういった話から少しずつ形を変えながら言い伝えられてきたものなのでしょう。