爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「図説 世界の文字とことば」町田和彦編

世界の言語を様々な方面から解説するということは良く行われていますが、そこに使われている文字がどのようなものかと言うことは意外に焦点を当てられることが少ないようです。

現在、世界には5000から7000と言われる言語があるそうですが、使われている文字はその1/100以下ということです。異なった言語でも共通の文字を使うということが行われてきたからでしょう。

もっとも広く使われている文字はラテン文字(いわゆるアルファベット)ですが、それが全く異なる系統の言語に使われるようになりました。それはラテン文字を使っていたヨーロッパ各国の世界支配によるものでしょう。

各地の言語にもともとあった文字を変えてしまったものもあり、文字を使っていなかった言語に適用した例もあるようです。

 

文字のもっとも古い出現は、古代メソポタミア楔形文字古代エジプトヒエログリフ象形文字)、そして中国の漢字の祖形である甲骨文字でした。

楔形文字はその後継承されることなく失われますが、ヒエログリフの末裔としてギリシア文字・アラム文字を経て現代のラテン文字キリル文字アラビア文字ヘブライ文字などにつながり、甲骨文字は漢字とその派生形の日本の仮名文字につながっています。

 

ギリシア文字は現代でもギリシアとキプロスで使われていますが、ラテン文字の基となったものです。現代ギリシア語とはかなり異なるようですが、使われている文字は同じものです。アルファ、オメガといった文字は現代でも様々な方面で世界中で使われています。

ラテン文字古代ローマの時代にギリシア文字から発展してできました。その後ローマが広くヨーロッパからアフリカアジアまで統治したためにその後も各国の文字の基として使われるようになりました。したがって、「ローマ字」と呼んだ方が通りが良いようです。

ラテン文字はその後のヨーロッパ民族の世界支配のために、支配下の各国の言葉の表記にも使われるようになりました。インドネシアベトナムポリネシア諸語・スワヒリ語・ヨルバ語(ナイジェリア)・トルコ語などもラテン文字が使われています。

 

アラム文字系統では、ヘブライ文字アラビア文字・ペルシア文字など中東の諸語の表記に使われる文字があります。日本人にとってはちょっと取っつきにくく何が書いてあるか分からない状態でしょう。

同様に、ブラーフミー文字の系統、すなわちインドの諸語の文字もほとんど図形のようにしか見えないものです。これにはヒンディー語ネパール語を表記するデーヴァナーガリー文字パンジャブ語のグルムキー文字、ベンガル文字・タミル文字・ビルマ文字・タイ文字が含まれます。

 

漢字の一族はさほど世界に広がるということはありませんでした。中国人が非侵略的であるのと関係するのでしょうか。それでも中国周辺各国には広がったものの現在ではラテン系などに変換してしまった言語も多いようです。

そんな中で日本語は漢字を使うとともにそれから派生した音節文字の仮名文字を使うということで、非常に特異な文字体系を作り出してしまいました。日本語が外国人にとって学びにくいというのはそこにも原因がありそうです。

 

文字と言うものの面白さ、なかなか見るべきものが多いようです。