爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

小選挙区制で本当に良いのか。

衆議院選挙がまたいつものように(当然ですが)小選挙区比例代表並立制で行われます。

 

この選挙制度の欠点を指摘する声は非常に多いのですが、政権政党に有利ということで制度改革を検討しようとすることすら全くありません。

www.weblio.jpこの解説には、利点として、安定した政権が作れること、「もしも」有権者政権交代を望むなら比較的に容易であること、そして欠点としては、死票が多くなること(死票率が70%を越えることも)、政党の得票率と議席占有率の乖離(日本の政権政党は4割台の得票率で7-8割の議席)、そして地元選挙区への利益誘導が激しくなることを挙げています。

 

おりから、ドイツで連邦議会総選挙が行われましたが、過半数に達する政党がなく、連立交渉が長引くことになり一見「政治の混乱」が続くように見えます。

これはドイツの選挙制度とも関連します。

ドイツの制度は「小選挙区比例代表併用制」とされており、日本の「小選挙区比例代表並立制」と同じように見えますが、実際には大差があります。

ドイツ連邦議会 - Wikipedia

 

ドイツの制度は、基本的には比例代表制によるものであり、それを補完するのに小選挙区制を取り入れているというものです。

ドイツの比例代表の選挙区は連邦全体ということですので、全国1区の大選挙区制にあたるでしょう。

日本は基本的に小選挙区制であり、それで落ちた候補者の救済や、小選挙区での候補者一本化に失敗して出られない候補者をなだめるために比例代表を使っているだけです。

 

ドイツのような政権樹立のための協議が長引くこと、政権が不安定であることは一見この制度の欠点のようにも見えますが、これこそが民主主義であると考えれば受け入れるべき事かもしれません。

 

それよりも、日本の制度で得票率が半分にもならないのに圧倒多数の議席を確保し強力な政権を作れる方がよほど問題でしょう。

しかも、これは日本の有権者の責任でしょうが、選挙の棄権が多く投票率が30‐40%などと言う状況であれば、その中の得票率4割ということになると実際には有権者の20%以下の支持で議席が8割以上という圧倒多数の政権を作れるということになります。

これはとても、国民の支持を受けた政権とは言えないでしょう。

 

なお、上記の「小選挙区制の解説」にはさすがに表には表し難いので触れていませんが、自民党に顕著に見られる「与党幹部による議員の支配強化」については欠点とされていません。

しかし、小選挙区制では政党の公認が絶対的な力を発揮し、そのために政党中枢部がいくら間違ったことをやっていても、その政党内の議員が反対の声を上げることができなくなっています。

選挙の際の公認を取り消され、対抗して公認候補を立てられれば当選は事実上不可能となるということを、多くの実例で示された議員たちはもはや政権中枢がいくら非道や暴虐を行っても何一つ批判もできなくなっています。

もはや、「自由」でも「民主」でもなくなったのが今の自民党であり、それが強大な権力を持つ源泉となっているのが衆議院選挙制度小選挙区比例代表並立制です。

こんな、欠点ばかりの制度をなぜいつまでも守らねばならないか。

それこそが政権党を有利にするからでしょう。