漢字の起源、甲骨文字の研究を通して中国古代の社会を描き出し、2006年に亡くなった白川静さんについて、身近な方々の追悼文や思い出、さらに多くの世間に衝撃を与えた著書発表時の感想など、いろいろな文章をまとめて白川静に関する社会の姿勢といったものを表現した本です。
冒頭の序章では、五木寛之さんと松岡正剛さんの対談が納められています。
その後の文章に続くのかどうか、ちょっと外れた観もありますが。
第1章は、白川さんに一度はお会いした方々の追悼文です。
ただし、多くの人が「お会いしたのは一度だけだが」と書かれているので、ごく近い関係の方々ではないようです。
水原紫苑、宮城谷昌光、呉智英、石牟礼道子、梅原猛といった面々です。
第2部はどうやら著作を通して影響を受けた人々が書いた文章です。
高橋睦男、伊藤比呂美、安野光雅、日野原重明、内田樹といった人々が書いています。
白川さん自身についての思い出というわけではないようですが、「白川学」というものから見ると影響の広さ、大きさを感じさせるものとなっています。
第3部では、白川さんの代表的著作の出版当時に評された文章です。
「中国の神話」などは1975年の出版ですが、それに対し1976年に書かれた評論家の高橋英夫さんの評が載せられています。
「字統」「字訓」「字通」の三部作については、立花隆さんの2004年の「私の読書日記」の一部に触れられています。
「平凡社月報によれば、漢字学にノーベル賞があれば差し上げたいと書いてあるがその通りで、文化勲章もさしあげていない日本国は恥じるべきである」と書かれています。
実はその年の10月に白川さんは文化勲章を受章しているのですが、まあそれはいいでしょう。
立花さんは勲章ももらえないのは「文部省の漢字政策を徹底的に批判しているからだ」としていますが、事実その批判は鋭いものです。
臭などの構成部分の「犬」を無定見に「大」にしてしまったのは最悪だという文章は何度も読みました。
白川さんの著作は何冊も読みましたが、まだまだ読んでいく価値はありそうです。