地方に行っても方言を話す人々は高齢化が進み、若い人はあまり使わなくなっている傾向が強いようですが、それでもこれまでとは違った使い方がされている面もあります。
この本は2013年の出版ですが、2011年の東日本大震災のあと、復興が進む中で住民を応援しようという「エール」が頻繁に見られるようになります。
それにその地域の方言が使われている例が非常に多かったようです。
これを「方言エール」と呼んで本書の最初に紹介されています。
色々なパターンがあるのですが、被災者みずからが個人的に作ったポスター、ワッペン、Tシャツなどに書かれている「がんぱっぺす宮古」とか「大船渡やっぺし祭り」といったようなもの。
そして外部からの救援・支援・激励として、「けっぱれ岩手」「まげねど女川」といったもの。
激励者側の方言を使った例として「チバリヨ―東北」(沖縄から)、「東日本応援しまっせー」(大阪で)といったものもありました。
こういった地域語を使うことで、より被災者を元気づける効果が増すと期待されてのことでしょう。
商品名や謳い文句に方言を使った例も増えています。
岩手県山田町が産物の「牡蠣」をPRするCMに、「カキークーケーコー」と女の子が言うというものがありました。
意味は「牡蠣を食うからおいで」というものです。
岩手県の日本酒をPRするためのポスターに「岩手の酒っこ ひゃっこぐしておあげんせ」と方言をそのまま表した文句を使ったものがありました。
これも、意味が正確に伝わるというよりは岩手らしい雰囲気を感じさせる効果を狙ったものでしょう。
最後には、インターネットを使って方言が使われていることを調査する方法が紹介されていました。
「なんしょ」という言葉は長野県南部でよく使われる、もてなしの方言ですが、これをグーグルマップの地図の検索でそのまま入れてやると、やはり長野県南部に検出されますが、それ以外にも福島県と九州に出て来るそうです。
使い方まで同じかどうかは分かりませんが、調査研究の端緒となるようです。
熊本県出身ではない身で熊本に住んでいる私としては、方言というものが非常に切実な問題なのですが、日本全体としてはやはり方言は消えつつある中で、守ろうという動きもあるということなのでしょう。