爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「ポスト西洋世界はどこに向かうのか」チャールズ・カプチャン著

近代から現在に至るまで、西洋(欧米)が世界中を支配してきました。

しかし、どうやらその体制はいつまでも続くわけではなく、近いうちに大きく変動しそうな様相となっています。

 

西洋モデル、すなわち「自由民主主義」「資本主義」「世俗ナショナリズム」というものが普遍的な価値かのように考えられ、その他の地域の国々もこのモデルを後から追ってくるのが当然のように考えられてきました。

 

しかし、欧米の先進国と言われる国々の力が目に見えて落ちてきたのに対し、力をつけてきた中国、ロシア、インド、ブラジルといった国はこのモデルとは違う価値観で動いているようです。

それでは、次の覇権国はどのような価値観なのか。

しかしその答えを出すのは簡単ではないようです。

 

本書では、まず現在までの数百年の間覇権をとった「西欧社会」がなぜそうなったのか、歴史的に解説していきます。

西欧社会が優位となったのはそれほど古い話ではありません。

そこには世界の大転換がありました。

ヨーロッパ社会はイスラム帝国や中国と比べて、その統治力ははるかに低いものでした。

その欠陥だらけの統治システムが逆に新興中産階級の発展を許し、それが社会や経済の変革の要因となりました。

イスラム帝国や中国はあまりにも中央集権の制度が完璧であったために、そのような中産階級の発展は起こらず、結果的に勃興した西欧に一方的に敗れました。

ヨーロッパでは新興ブルジョワジー勢力がさらに宗教改革を起こし、代議制統治も始め、資本主義を形作り、結局は世界を支配する西洋モデルを作り出しました。

 

そのような西洋モデルに従う国が没落してきたのは、激しく進行するグローバリゼーションというものがどうやら西洋モデルの国家では対応できないようだからです。

もしかしたら中央集権的な国家の方がそれに上手く対応できるのかもしれません。

 

これから力を得そうな国々の体制は、とても民主主義とは言えないものばかりのようです。

独裁国家、それは単に一人の独裁者によるものだけでなく、共同体主義独裁制共産党による中国支配のような)、家父長主義独裁制(ロシア)、そして部族独裁制ペルシャ湾岸諸王国)などがあります。

また、神政政治を行うイスラム諸国家も力をつけています。

イスラム教という宗教は法的支配もその中に含んでいますので、神と政治が同一になることもあり、それは宗教と政治とは分離するという西欧的観念とは相容れません。

他にもアフリカ諸国のようなワンマン政治、南米の左翼ポピュリズム政治など、西欧モデルとはまったく異なる状況が作られています。

 

このような世界をどうしていけば良いのか。

著者はやはりアメリカ的な立場からそれを少しだけ提案しています。

グローバリゼーションはやはり何とか制御しなければならない。

アメリカのリーダーシップを復活させなければならない。

など、まああまりできそうもないことを言っています。

 

この先の世界はどうなっていくのか。

アメリカの覇権が揺らぐというのは間違いないことなのでしょうが、すんなり中国がリーダーとなるというわけには行きそうもありません。