爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

再春館製薬所の「太陽の畑」とはどのようなものか。

熊本でも有数の優良企業、「再春館製薬所」は化粧品で全国的にも知られていると思います。

そこが数年前に実現した「会社の年間使用量に相当する電力を作り出す”太陽の畑”の完成」については、当地熊本では相変わらず頻繁にテレビコマーシャルでも流されていますが、全国的にはどうなのでしょうか。

 

それがどの程度のものなのか。

少し考えてみようというものです。

 

同社のホームページには環境対応策としてこの「太陽の畑」以外にも施策が紹介されています。

www.saishunkan.co.jp

この中に記されている「太陽の畑」についての記述もそのまま引用させていただきます。

  • 5.
    再春館「太陽の畑」(太陽光発電設備)
    本社建物の壁面や屋上のほか、広く周辺地区にも及ぶメガソーラーシステム。私たちは『再春館「太陽の畑」』と名付けました。この発電設備では、再春館ヒルトップ年間使用電力の100%にあたる電気が作り出せます。CO2の排出量削減など、国際的に地球環境保全の動きが高まる中、2001年、再春館ヒルトップへの工場移転の時から13年をかけて作り上げました。「自分たちで使う電気は自分たちで100%つくりたい」と想い描いた夢の取組みがようやく実現しました。
  • 発電容量:8,315kW = 約2,000家族分の年間使用電力量に相当
  • 年間発電量:7,671,478kWh/年
  • 総面積:45,600㎡(パネル部)
  • パネル枚数:30,191枚
  • CO2効果:2,930t/年

ギリギリの記述で「再春館ヒルトップ年間使用電力の100%にあたる電気が作り出せます」と書かれています。

もちろん実際にその発電電気だけで会社が動かせるはずもないので、余った場合は電力会社に売却、足りない時は購入するが、数値としては釣り合っているということでしょう。

 

発電容量は8315kW、2000家族分とありますが、これは100Vとして40A,今の家庭ではそのあたりでしょう。

それを作るための太陽光発電パネルが3万枚あまり、1枚あたり0.28kWです。

このパネルの総面積が45600㎡、もちろんすべて密着させて置けるわけではありませんから、実際の面積はそれよりはるかに広いものでしょう。

 

この発電量が使用量とほぼ同じということです。

太陽光発電では最大発電量を発揮できるのは一日の内ごく短い時間でしかありません。

太陽がちょうど正面に位置する時が最大で、その前後数時間のみが発電可能時間帯です。

年間発電量を仮に365で割ると一日当たりになります。それが2万1千kWh/日

それを8315で割ると2.5時間となり、まあそんなものかとも思いますが、ただし雨天曇天の時もあるでしょうからそこがどの程度になるのか、地方によって違いはありそうですが、熊本は比較的晴天が多い方でしょうか。

 

これが工場の電力使用量とほぼ同じということです。

工場は日勤部門が多いのでしょうが、おそらく24時間勤務部門も一部はあるかと思います。

そこで、1日当たりの2万1千を24時間で割ると、875kWhという値となりました。

 

これは工場としては小さな使用量に見えますが、製造部門が少ないところであればこの程度のものかもしれません。

 

ちなみに、私がかつて勤めていた工場はほとんど製造部門だけでしたが、工場全体の電力使用は6000KW程度でした。

この辺は業種によって大差があるようなのですが、仮にその工場で太陽光発電だけで同等の発電量を確保しようとするなら、パネル面積だけで実に31万㎡、560m四方の面積となります。

これは奇しくも私の勤めていたその工場の面積とほぼ同じです。

つまり、工場全敷地を太陽光パネルで埋め尽くさなければ必要電力を確保できないということでしょう。

 

一口に製造業と言っても、そこでの電力などエネルギーの使用量は業種により大差があるようです。

石炭などの熱源を非常に多く消費するのが鉄鋼業というのは想像できますが、化学工業も消費量が多いようです。

電力はやはり機械工業が多いとか。

なお、最近はやりの精密工業なども無菌環境を作るための空調設備が電力を大量消費しそうです。

 

以上のように、再春館製薬所太陽光発電の取り組みの例を見ると、製造業がそれを取り入れていくことの難しさというものも見えてきそうです。

「自分のところじゃ無理だな」という感覚を持たれるところが多いのではないかと感じます。