当方で購読している新聞は県内のみが営業範囲の地方紙なのですが、それに時々入ってくるのがその新聞社の別部署で作られていると思われる生活情報誌というものです。
いつもは他愛のない内容ながら、県内各地の観光案内やレストラン、パン屋の紹介など、地元ならではの情報が込められ、まあ参考にはなるようなものも数々あります。
ただし、本日配られてきたものの中にはちょっと困った内容が入っていました。
今号のテーマは「心を癒す庭仕事」ということで、園芸などをやってみようという内容です。
とは言え、それほど本格的なものではなく、マンションのベランダでもできるようなプランターを使い花や野菜を育ててみましょうといった程度のものです。
そこで助言を話しているのが園芸用品販売らしき店舗の人なんですが。
プランターでも野菜は作れますが、それには「安全安心な有機質100%の液肥を使えば初心者でも安心」だそうで。
化学肥料=添加物という認識も相当ずれているようですが、有機肥料の液肥っていうのもね。
私も有機農業自体を意味がないなどと言うつもりはありません。
有機物を農地に投入し、微生物や昆虫、ミミズなどの生物の繁殖を促し、(化学肥料だけではこういった生物の栄養にはなりませんので)環境を整える必要性と言うものはあります。
しかし、植物自体は栄養源としては有機物を直接吸収することはできませんので、結局は化学肥料と言われる無機質成分まで分解しなければなりません。
有機化合物を含む有機質肥料と言うのは、結局はその分解過程を担う微生物などを培養する役目を果たすわけですね。
したがって「有機農産物が栄養面でも優れ、農薬の危険性もない」などといった売り文句をする業者も要注意です。
まあそれは今回は触れません。
分解が必要な高分子有機化合物(なんていうとすごいもののようですが、”植物体”などがそれにあたります)を含むと「液肥」になりません。溶解しないので。
そうなると何を入れるのか。
どうやら、アミノ酸や核酸、各種糖分などの「可溶性有機物」(つまり低分子)のようです。
これらも有機化合物であるのは間違いないので、これだけで作れば「100%有機質」であるのは確かですが、そんなもの肥料にしても何の意味があるのでしょう。
分解に時間がかかることもないですから、あっという間に消えてしまいます。
有機質肥料の有効性である「遅効性」は無くなります。
しかもこれらはほとんど炭化水素でアミノ酸・核酸に若干の窒素分は含みますが、リンやカリはそれほど入ってはいません。
こんなものを入れて何が「初心者にも安心な肥料」なのでしょうか。
おそらく、この生活情報誌の取材記者が、情報源の園芸店従業員の言うがままを記事にしただけなのでしょうが、新聞と違って「情報の裏を取る」ということは無いのでしょう。
どこかのラーメンやケーキが美味いという程度の情報並みの扱いなのでしょうが、ちょっとどうかと思います。