著者の大平さんは精神科医、病院で患者の治療にあたっています。
ドライで愛などというものを求める人も少ないのではないかと思うような現代ですが、大平さんのところにやってくる若者たちの中には「純愛」を追い続けているような人々も多いようです。
なお、本書で描かれている人々は実際に著者が診察し治療した人々に了承をもらって書いており、その状況は変えているものの、本人が見れば分かる程度のものにしているそうです。
その後は通院することも無くなった人がほとんどですが、今どこでどう暮らしているのかは気になるそうです。
フーゾクでアルバイトをする女子大生が、客として来ていた男性と純愛をしてしまい、求婚されるものの断ったために妄想や幻聴を見るようになり来院したということがあったそうです。
症状は軽減したり悪化したりと様々ですが、来院の度に話し方が変わり、どのような病状かを判断するのも難しかったようです。
しかし、精神科の治療は患者の話をまず聞くことということなので、慎重に患者の思いを聞き出していく内にその心の奥底が分かってくることもあるとか。
他の患者さんたちも、症状としてはうつ病や分裂症と診断されるのでしょうが、愛情のもつれからそういう状態になってしまうということは、誰にでも起こりうることのように感じます。
そのような人たちのもつれた感情を一つ一つ解いていくかのような精神科の治療というものは難しいものであろうと思います。