著者は大学で基礎医学研究をした後、医療現場の病院に神経内科医として転進したそうですが、そこでは看護師や保健師などの医療スタッフも神経内科の病気についてあまり理解できていないことに驚いたそうです。
ベテランの看護師でも脳血管障害とパーキンソン病の違いが曖昧であるため、これではいけないと簡潔なレクチャーをしたそうですが、これは患者や家族などにとっても有用であるとして、文章に残すことにしたとか。
神経の病と言っても一般の人からはあまり良くわからないものであり、精神科と混同されることも多いとか。
しかし、たまに話に聞くようなパーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症は、悲惨な症状だということはうっすらと知られているようです。
神経に関わる病気と言っても、その種類は非常に多く原因も症状もバラエティに富んでいます。
神経の働きというものは非常に精密なものであり、それが少し狂うだけでも大きな影響が出るものです。
これを著者は現代社会における情報システムにたとえています。
通信やネットワークなど、情報システムに異常が出れば社会の動きもスムーズにはいかないように、人間の身体の中も神経の働きが狂えばまともに動けなくなります。
神経内科に受診する患者で最も多いのは頭痛がするというものです。
しかし、頭痛と一言で言ってもその症状や原因は多岐にわたり医師による診断も難しいものだそうです。
風邪や高熱でも痛くなり、心因性のものもありますが、中には脳腫瘍やクモ膜下出血の症状として現れるものもあり、慎重に診断しなければならないものです。
「マヒと震えと千鳥足」と題された章では、そういった運動機能障害について解説されています。
このあたりは、そもそもの運動制御と言うもの自体もあまり理解されていないことのようで、その説明から丁寧に記されています。
脳梗塞や硬膜下血腫など、脳血管障害というものも重要な疾患であり多くの人の死因でもあります。
緊急対応の医療処置の進歩もあり助かる可能性も大きくなりましたが、なにより動脈硬化を予防することが大切のようです。
最後に、重症筋無力症やパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、筋ジストロフィーなどの難病についても記述されています。
原因すら未だに明確なものではなく、治療も不可能というものです。
神経というものが動物の中でいかに重要なものかということが、病気を通してみるとよくわかるようです。