飛行機や車の大事故、発電所の事故などの時によく聞く「金属疲労」
針金などを何度も曲げたり伸ばしたりしていると、そのうちにポキっと折れるというのと同じ現象だということは聞いていて、そんなものかと納得してしまいますが、実際はかなり奥の深い問題のようです。
金属疲労について長く研究されてきた著者が、できるだけ?易しく一般向けに解説されています。
飛行機や列車、また橋梁や船などの金属部分が突然折れてしまうような大事故が起きることがありますが、その原因というのが「金属疲労」
徐々に変化が起きていき、それが溜まり溜まって限界を越えて破壊するということです。
金属疲労というものは、避けることができず必ず蓄積していくものです。
それを事故にまでつなげないために、技術者たちが設計から製造、保守に至るまで努力しているために、ほとんどの場合で事故は防げています。
金属というものを広く使いだしたのは、産業革命以降ですが、その初期には大きな機械などが突然破壊されるということが頻発し、大きな社会問題となったそうです。
その原因を追求していくと、そこに金属疲労という現象があることが分かってきました。
破壊された金属というものは最良の教科書とも言うべきものであり、それを研究していくことで金属疲労の原因や対策というものも徐々に整っていきました。
金属は結晶の間を電子が自由に動き回るようなものになっています。
そのために、電子が動いたあとの隙間、転位というものが存在し、そこが変形するということが起きます。
これが金属特有の塑性となり、展性、延性という性質をもたらします。これは伸ばしやすく広げやすいという、金属の使いやすさに結びつくのですが、一方ではこれが金属疲労の原因ともなっています。
硬い金属は強いが脆い、というのはこのジレンマを言い表しています。
延性が高い金属は使いやすいのですが、疲労を起こしやすいということです。
疲労を起こさせるのは、繰り返しかかる力の作用です。
たとえば、回転する軸には非常に多くの力が連続してかかるために、疲労も早く溜まります。
また、熱がかかる場合もそれによって膨張したり収縮したりという動きを繰り返し、それによって疲労する場合もあります。
このような作用には酸素と水蒸気が大きく関わっており、その存在下では疲労が非常に速く起きることになります。酸素も水蒸気もない宇宙空間では金属疲労が遅いことも知られていますが、熱疲労は起きる可能性はあります。
金属の塊を切り出して、金属板を作る場合、板の表面と側面の角の部分はそのままでは尖っています。
この部分は作業者の怪我の危険もあり、できるだけ面取りという鈍角にする作業が必要なのですが、これが金属疲労の芽を摘むという意味でも重要だそうです。
鋭角な部分は金属の結晶が単独で存在することが多く、そこに変形が集まりやすいだからです。
金属疲労というものは避けられないものですが、それを事故につなげてしまうかどうかは、その後のマネジメントによって差が出ます。
できるだけ疲労を避けるような構造とし、疲労が出たら事故につながる前に部品を交換する体制をうまく構築することが疲労事故を防ぐためには重要なのですが、かといって過大な部品交換はコスト増になってしまいますので、的確なシステムが必要となります。
技術レベルの向上というものが必要なのでしょう。