安倍内閣は支持しない(支持率が不支持率を下回る)けれど、投票は自民党という、とても信じられない投票行動で、自民党圧勝という結果に終わった衆議院選挙ですが、その安倍内閣の目指す安全保障(なにが「安全」やら、「暗然」としていまいます)がどのようなものなのか、中日新聞・東京新聞などで安全保障関係を専門にしてこられた、半田さんが2014年に書かれたこの本は今でも十分に参考にできる内容です。
各章の章題を見ただけでもため息がでる感じがします。
第1章「不安定要因になった安倍首相」
第2章「法治国家から人治国家へ」
第3章「安保法制懇のトリック」
第4章「積極的平和主義の罠」
第5章「集団的自衛権の危険性」
第6章「逆シビリアンコントロール」
どこを取っても本書執筆の3年前には分かっていたことですが、それがさらに拡大されてしまいました。今後もさらに大きく、強くなっていくのでしょう。
半田さんの意見は一々もっともなことばかりで、逆にどれを紹介しようかと迷うのですが、次のことを挙げておきます。
集団的自衛権の必要性?を説明したいのでしょうが、安倍やその周辺がおかしなレトリックで変なことを言い続けています。
しかし、著者が極めて理路整然と説明していることに反論できるでしょうか。
日米安全保障条約では、「日本国の施政の下にある領域におけるいずれか一方に対する武力攻撃」への対処を定めています。
この条約を無視して、「海外に展開する米軍」や「米国の施政下の領域」への武力攻撃に対処するということを認めたら、現在の日米安保条約とは矛盾することになります。
この条約では、アメリカが日本を防衛する見返りとして日本はアメリカに日本国内で基地を提供し、のみならず米軍駐留経費も実に6400億円(2013年度)も負担しています。
この負担はそのままに、さらに海外での軍事負担も求められなければならないのでしょうか。
それを進めるのならば、安保条約改定が欠かせないはずです。
安倍首相は「積極的平和主義」という言葉を再三使っています。
これまでの、海外での紛争から距離を置いてきた政府姿勢を「消極的」とみなして否定しています。
この認識は「アメリカの強力な指導力が失われつつある」というところから由来し「パワーバランスの変化の担い手は中国・インド等である」という多極化です。
つまり「弱体化したアメリカを補い、安全保障面の役割を果たす」というものです。
これは、口では日米同盟強化をうたっているものの、積極的平和主義を突き詰めればアメリカから離れ自主防衛に向かうのではないかと思わせるものです。
なお、北朝鮮の危機をことさら取り上げて政治利用する動きが強いのですが、実は北朝鮮との戦争を検討する「K半島事態対処計画」というのも、自衛隊を中心としてこれまでに十分に練られているということです。
それによれば、北朝鮮の軍隊は人数こそ多いけれどその装備や状態は不良であり、航空機や船舶同士の戦闘では米軍や日本自衛隊の敵ではありません。
しかし、テロやゲリラ戦を仕掛けられればその対応は不可能です。
またミサイルもその破壊力自体は小さくても原発や関連施設を攻撃されればその被害は大きくなります。
つまり、北朝鮮と戦争となれば北朝鮮の国や国民はほとんど壊滅させられても、ほんの一部の生き残った部隊がゲリラ戦を仕掛ければ日本も韓国もほぼ壊滅となるということです。
このような政権を、しかもさらに多数の議席をつけて選んでしまった。どうなるのか期待して見ていきましょう。