著者は環境学者ではなく、経済が専門ということです。
したがって、二酸化炭素温暖化説が妥当かどうかということを判断する立場ではなく、懐疑派が多いということも承知の上で、それならばどういった態度を取るのが最適かということを論じようとしています。
この辺の事情は、私自身のこの問題に対する態度(二酸化炭素濃度上昇に伴う温暖化が著しい影響があるかどうかは分からないが、化石燃料はやがて尽きるから今から使い方をコントロールすべき)と少しだけですが通じるところがあるように感じます。
とはいえ、やはり主流派の温暖化説論者に寄った論議なのかもしれません。
温暖化問題は確定的かのように論じる人もいますが、明らかにまだ「不確実」です。
しかし、不確実性に対処するというのは経済学が得意とする分野でもあります。
これは「保険」というものが果たしている役割と同じです。
確実に成功するとも失敗するとも言えない場合、確率的に考えて予防的に資金を準備しておくというのがその考え方ですが、温暖化に対しても同様な思考ができないかというものです。
ただし、人が事故死する確率、病気にかかる確率は多くの例があり予測できますが、温暖化が本当に害を為す確率はまだ知られていません。それをどう見積もるかを考えなければそれに対する対応の投資もできないことになります。
以下、アメリカの政策、EUの政策、日本の政策の紹介が続きましが、結局のところその問題の「温暖化による損害の確率」がまったく予測できないという問題には近寄れないようです。
まあ、悪いけど、「経済学は何もできない」ということを表しているだけのように見えますが。