爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「”健康食品”ウソ・ホント ”効能・効果”の科学的根拠を検証する」高橋久仁子著 その1

高橋久仁子さんのご著書のうちでも早い時期のものを再読した読書記録を最近書きました。

「”食べ物情報”ウソ・ホント 氾濫する情報を正しく読み取る」高橋久仁子著 - 爽風上々のブログ

 

そこでははっきりとは書かなかったものの、「最近著書の出版が無いのは寂しい」という思いをにじませていたものと(筆力が無いので感じられなかったかもしれませんが)思います。

 

しかし、先週に同窓会出席のために帰省(私の場合都会に行くのが帰省になります)した際に、大きな書店をのぞいたらなんと高橋先生の新刊が。しかも6月出版されたばかりのものでした。

喜んで買ってきましたが、内容は予想以上のものです。

 

なお、高橋さんは長らく群馬大学教育学部の教授を勤められていたのですが、一昨年に定年退官され名誉教授となられたそうです。

 

さて、本書内容ですが、最近の「健康食品」ブームは驚くほどの盛り上がりを見せ、怪しい中小企業ばかりか日本有数の大企業まで参入している始末です。

 

健康食品の中でも一定の根拠のあるものを認める制度として、以前からのトクホ(特定保健用食品)に加え、昨年から機能性表示食品なる制度も始まりました。

これについては、FOOCOM.NETでも盛んに批判が加えられており、それをこのブログでも紹介しております。

それらの制度で認められないようなものでも、「健康食品」として堂々と売られているのですが、実はこの本ではそういったいい加減なものよりは、「トクホ」「機能性表示食品」などの真実について、根拠となっている論文なども改めて科学的に検証され、いかに針小棒大にその効果を誇大宣伝しているかということを明らかにしています。

 

本書序章に最初に書かれているのは「食生活は健康に大きく影響する」というものです。

これは間違いないことですのでそこを最初に強調しています。

しかし、それは食品に含まれている「機能性成分」というものが健康に効くということを意味しません。

いや、そういった「機能性成分」ばかりを摂取するという食生活には大きな問題がありそうです。

 

著者らは2010年に健康食品を利用している人とそうでない人にアンケート調査を実施したそうです。

非喫煙・十分な睡眠・身体活動・食べ過ぎない等の「保健行動」と名付けた生活態度を取る人は、健康食品を利用せず、かつ健康情報に関心の高い人に多かったようです。

一方、健康食品をよく利用するグループではそういった保健行動実施率は上記のグループの人よりは低いという結果になりました。

健康食品を摂取しているということだけで安心してしまい、それ以上の行動にまで届かない状況が見えます。

 

なお、もっともひどいのは「保健行動」もせず、「健康食品」も摂らない、結局はまったく健康に留意しないという生活態度の人々で、こういったグループが男性では半数、女性でも3割程度は居り、今後の健康問題が危惧されそうです。

 

健康食品による健康被害も起こりうるということも大問題です。

著者はその危険性を10挙げています。

1有害物質を含むものがある

2医薬品成分を含むものがある

3一般的な食品成分でも病態によっては有害作用をもたらすことがある

4抽出・濃縮・乾燥等により特定成分の大量摂取が問題を生むことがある

5高齢者の代謝に過剰な負担を強いる

6医薬品利用者における薬剤との相互作用が起こりうる

7食生活の改善を錯覚させる

8生活習慣の見直しが不要と錯覚させる

9治療効果の過信で医療を軽視する

10非食品の食品化

 

どれも被害を起こす可能性が強くありそうなものばかりです。

 

少々長くなりましたので、トクホ・機能性表示食品・栄養補助食品の問題点を批判した部分は”その2”として改めて書きます。