爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「エナジー・フューチャー」ロバート・ストーボ、ダニエル・ヤーギン編

元々国内産の石油を使いエネルギー多消費型の文明と言うものを作り上げてきたアメリカですが、戦後になり徐々に国内産の石油が減少していきそれに伴い中東産原油の輸入量が増えていきました。
しかし、ちょうどその頃中東でのイスラエルとの紛争のあおりを受け、1973年に石油ショックという中東原油のトラブルが起きました。数量減、価格上昇という影響が出てきたのですが、本書はその実態を受けその先のエネルギーはどうなるかと言うことをハーバート・ビジネススクールの特別研究プロジェクトとして調査した結果を1979年にまとめたものです。
ロバート・ストーボはその当時の教授、ダニエル・ヤーギンは講師だったそうですが、ヤーギンはそれから今日まで活躍しているもののストーボの名前は残っていません。

なお、ハーバート・ビジネススクールとしてはこういったプロジェクトの結果に責任は負えないということで、ストーボ、ヤーギンの共著と言う形になっていますが、学校としての調査チームではあったようです。
ついでながら、本書の訳者は芦原義重氏ということになっていて、当時の関西電力会長という人です。実際は関西電力の社員の人が担当したのかもしれませんが、電力会社にはそういった力が当時はあったということでしょうか。

石油ショックというものは間違いなく当時の中東の情勢により生まれたものですが、それが一過性のものでやがて治まるという見通しは持たずにこの後もずっと続くと言う判断をしたのは誤っていなかったようです。
その上で、どのようなエネルギーを今後開発していくべきかという形での議論をしているのですが、当時としての見通しという制限はあるものの、今になって見てもさほど明白な誤りと言うものはないといえます。

輸入石油の脅威は増大するというのは間違いありませんでした。天然ガスは使いやすいものも残り少ない。石炭は豊富にあるがいろいろな制約が多いというのも同様です。
原子力はすでにスリーマイル事故があり将来の展望に疑問視しています。チェルノブイリは本書のあとですので、さらにそのような見通しを強めたことでしょう。
省エネルギーということを一章を費やして書かねばならなかったのもアメリカらしいところです。日本であれば書く必要もないことでしょうが、まずなぜ省エネかというところから説明しなければならないところがアメリカの問題点なのでしょう。
太陽の恵みと題した章では、最近のように太陽光発電だけを扱うのではなく、植物や水力、風力などすべての太陽由来エネルギーを説明しています。これは間違いのない姿勢だと思います。

すでに40年近く前の議論ですが、方向性としては誤りがありません。また、シェール・オイルの問題点も書かれており、すべての現在のエネルギー問題はすでにこの時点で明らかであったと言うことが判ります。宇宙での太陽光発電などと言うことも触れてあります(疑問的にですが)
と言うことは、現在明らかになっていることでこの後数十年はそのまま進行すると言うことでもあるのでしょうが。