爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「九州・沖縄食文化の十字路」豊田謙二著

著者は熊本学園大学教授で経済学出身ですが、食文化に関する著書も多いようです。九州が活躍の場であったようで、各地を実際に訪れていろいろな食文化と接して居られるということです。
九州の文化は食に限らずさまざまな方面で朝鮮半島や中国の影響を強く受けているわけですが、それらを薬膳の方向から、また焼酎というものを通して、さらに各種の食品を取り上げて語っているのですが、あまりにも広いその範囲のためか、一つ一つの事例を解説するスペースが足らず読んでいる方が「もう終わりなの」という感覚を持ちながらすぐ次の話題という展開になってしまったのは残念でした。本としてまとめることは難しいのかもしれないのでしょうが、もう少し話題を絞ってもらったほうが読みごたえがあったかもしれません。

韓流ブームも長く続いていますが、特に「チャングム」の物語は韓国の料理について扱っていたために韓国の薬膳料理についての興味も引き起こしたようです。本書の最初はこれについて扱っています。ただし、その後の文章とのつながりは無いようです。
次章は焼酎と食という観点からの話になります。最初は壱岐麦焼酎について、さらに壱岐の食文化とくにウニの話から始まっています。焼酎の起源は中東なのでしょうがその伝播ルートとして沖縄から薩摩へのルートがあったのは間違いがないのでしょうが、著者はそれ以外に壱岐の焼酎は朝鮮半島から直接伝わったという説を採っているようです。
その次には大分の麦焼酎、球磨の米焼酎、宮崎の蕎麦焼酎と次々と紹介されていきますが、残念ながらどれも文章が短い。広く浅く見るには良いのかもしれませんが、物足りなさが残ります。

さらに食文化の十字路という次章では、海草、麺、豚肉と次々と話題が紹介されていきます。ただし、これも短い。

しかも最後には「薩摩焼酎の現代史」と題し鹿児島の焼酎産業の経緯、その発祥から明治になり自家醸造が禁止され企業化が進んできたことなど盛りだくさんの話が、ここも極めて簡略にまとめられています。

どれも新聞などの連載記事をまとめたもののようです。一編が短いというのはそのためでしょうが、まとまって深い記述は著者の別の書籍を読めということなんでしょうか。まあ探してみても良いかなという感覚は持てるものでした。