爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「私が見た、”韓国歴史ドラマ”の舞台と今」蓮池薫著

あの蓮池さんの著書です。帰国後は大学講師も勤める傍ら、韓国の本の翻訳などもされているようです。
韓国のドラマは日本では変わらずに人気を集めているようで、毎日放送がない日はないほどですが、北朝鮮の内情まで非常に詳しい著者がそれについて色々な感想を持っているようです。

特に歴史ドラマでは舞台が現在の北朝鮮の範囲内にあることも多いようで、著者も滞在時には史跡として残っている場所を訪ねたということもあったようです。

歴史の扱いと言うものも現在の政治状況を反映しますので、朝鮮の歴史でもその評価などは南北で相当違いのあるようです。
特に朝鮮の三国時代、つまり高句麗新羅百済が並立し争っていた時代ではその内の高句麗がほとんど現在の北朝鮮の領域であったと言うこともあり、特に北朝鮮での評価が高く、逆に新羅は酷評されているようです。
その当時は中国からの侵略の動きも強かったのですが、高句麗が頑強に抵抗したために朝鮮半島の中国支配を免れたということは事実のようです。

高句麗の大王の広開土王を扱った、ぺヨンジュン主演の太王四神記では、その最初の部分は神話を扱っており朝鮮の最初の王と言われる檀君が描かれていますが、北朝鮮ではその檀君が実在していたと信じられ(信じさせ?)ているそうです。5000年前の遺跡を発掘したとして、その当時の文明の実在の証拠としていて、さらに記念施設などの建設もされているそうで、著者も一般に公開されているものには見学したこともあるそうです。
もちろん、韓国では神話として扱われており、北朝鮮の実在説には同意はされていないようですが。

朝鮮で歴史上ヒーローとして扱われている人物には、李舜臣があり豊臣秀吉朝鮮出兵を撃退した指導者として一番の尊敬を集めているのですが、北朝鮮でもそれは違いがないにしても南ほどには評価が高くないようで、それには貴族であったことや南の慶州出身であることなどが関わってくるそうです。
また、やはり高句麗の人気が抜群で、その開祖の朱蒙や広開土王のタムドクが人気があるとか。
韓国では以前は高句麗の人気はそれほどでもなかったのが、最近のドラマでは朱蒙やタムドクが人気を博しているようです。その後統一を果たした新羅が人気だったのがここは北と同じ方向になっているようです。

なお、韓国での高句麗ブームが起こった理由には、中国が高句麗を自国の辺境政権と位置づけて評価した2002年の「東北工程」と呼ばれるプロジェクトに対する反感が強かったようです。高句麗もその初期の領域は現在の中国東北部にあり、実際に広開土王の石碑(好太王碑)は中国国内にあります。しかし、この中国の報告については韓国国内では大きな反感を呼び起こしたのですが、北朝鮮でも相当問題視され、公式には発表されないまでも非公式にかなり反発をしていたそうです。それを期に南北そろって高句麗を評価すると言う機運になったそうです。

韓流ドラマでは俳優の人気が強く、その背景や舞台というところはそこまで認識されていないのではないかと言う感覚がありますが、さすがに著者が半生を過ごしたところが舞台ですのでその想いもあるのでしょう。