高齢者が生活困難となり、生活保護を受けたり、悪くすると孤独死するなどといった話題は多く聞くようになりましたが、大学で教える傍らソーシャルワーカーとしても活動されている著者がいろいろな実例を引いている本書を読むと他人事とは思えません。
社会や家族の大きな変化が起こり、社会制度がそれにはまったく追いついていない状況で、何とか生活している高齢者もちょっとした出来事で破綻する可能性があるということが分かります。
破綻に至る前では一応生活が成り立つだけの年金などが得られていても様々な状況でアッという間に悪化します。
そういったきっかけとなるのは、病気・怪我などの治療費、詐欺などの犯罪による損害、子や孫の生活困難により援助をしなければならなくなって共倒れ、さらに子などの身内からの搾取ということもあるようです。
しかも現代の特に都会の高齢者は地域でのつながりも薄く、知り合いも少ないために非常事態に陥ってもどこに頼るという知識もないまま困窮が深まるということになります。
あわやのところで、ソーシャルワーカの知るところとなり救われたという事例も多いようですが、一歩遅れればそのまま破綻することになりそうです。
社会保障制度というものも変遷をしながらもなんとか現状を救おうと整備されていますが、不十分であるとともに、分かりにくくすべての人々が熟知しているとはいいがたい状況です。さらに、情報に触れる手段の少ない高齢者にとっては無いも同然のネット情報だけでは本当に必要な人に届かない状況も多いことになります。
自治体も対策に力を入れているようですが、まだまだ零れ落ちる人が出てくるようです。自分も危うくなる可能性もありますが、周囲にも気を配りたいものです。