爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「テロは日本でも確実に起きる」井上忠雄著

著者は陸上自衛隊でながらく研究や教育部門に携わり、化学兵器などの知見も多いようです。
海外の研究者や軍事関係者との交流も多いようですが、地下鉄サリン事件のあと海外の研究会で出席者からその事件の経験から日本はどのような対応を取っているかと聞かれ何もないことに愕然とし恥ずかしい思いをしたということです。
唯一の核被爆国であると主張していながら核戦争への対応はまったく為されず、化学テロでも大規模な事件がありながらこれといった対策も立てていないという日本の状況を嘆いています。

核・化学・生物の兵器は正規軍によっても研究され、実際に配備もされて使用された例もありますが、これらは小規模なテロでも使用しうるという危険性があります。そのような場合には自衛隊や警察、政府の対応はほとんど期待できないようで、自分の身を守るためには必要な知識を身に付けることが大切です。

核では小型の核爆弾も製造される可能性がありますが、それよりも「放射性物質」と普通の爆薬を組み合わせた爆弾の危険性が大きいそうです。つまり、原発等の使用済み燃料を奪いそれを普通の爆薬の爆発で吹き飛ばして一面に放射能を撒き散らすようなもので、破壊力はありませんが放射能の危険性で社会不安を起こすもので、福島原発事故の様相を見れば都会の真ん中で爆発させることで東京の機能を停止させる程度のことはできそうです。

化学兵器については各国軍隊が盛んに研究を進めたために毒物の研究も相当進んでしまいました。イラク大量破壊兵器については存在不明ということになりましたが、著者によれば化学兵器に使用する毒物の生産は大量にされており、その意味での大量破壊兵器は存在したということのようです。イラク戦争の際に使用されなかったのは、すでに大勢が明らかになった時点では、化学兵器使用の責任者は命令されても使用をすると戦争犯罪の責任を問われるためにその命令は無視したのだろうという推測です。

生物兵器オウム真理教でも研究され実際に散布されたそうですが、その方法があまりにも稚拙だったためにちょっと異臭がしたという程度で終わったそうです。生物に詳しい信者は居なかったようですが、化学兵器と違い臭いもほとんど無いために使われてもなかなか気付きにくいという怖さがあります。

そのように、こういったテロ攻撃は誰も気付かないまま始まっていることも有得るということです。周りで人が次々と倒れるとかいう事態に至った時には室内を密閉してこもった方が良い場合もあるとか。とにかく政府の対応は期待できないようです。