爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「黒田官兵衛」諏訪勝則著

本書の出版は昨年の暮れですので、今年の大河ドラマは意識はしての本かもしれません。
著者の諏訪さんは専門の歴史学者ではないようで、趣味で研究を続けている方のようです。しかし、内容は非常に的確かと思います。

大河ドラマの方は8月現在、信長が本能寺で討たれ秀吉に天下が移ったあたりですが、官兵衛の戦いはまだこれからのようです。

ドラマでも黒田家の出自は明らかではなく、祖父の頃から小寺家に仕え頭角を現していましたが、実際にもそのようです。近江や備前の黒田と関係があるかのような話もありますが、どうやらそういった経歴も後に作り出したもののようです。
官兵衛が非常に戦上手で強かったのは事実のようです。わずかな兵で多数の敵を打ち破ったということも何度もあったそうで、その面の信頼性は強かったようですが、「軍師」と呼ばれるような存在であったかどうかということは疑問の余地がありそうです。軍師というよりはやはり強力な大将だったのかも知れません。
秀吉の天下攻略の中で、四国や九州攻めはやはり官兵衛がいなければできなかったことかも知れません。

また非常に人間性において人から信頼される性格だったようで、和平交渉などでその人格に触れるとその後まで信頼し続けると言う相手が何人も居たようです。
小田原攻めで最後に北条氏と交渉したのも官兵衛ですが、成立後に相手方の北条氏からその礼として吾妻鏡、日光一文字の太刀、法螺貝の三点が贈られたということですが、これは宝物を官兵衛に託したという意味が強いと言うことです。太刀は今は国宝となっています。

戦の面ばかりでなく、文化面でも大きな役割を果たしていたことはあまり知られていないようですが、利休亡き後茶道を継承したり、連歌は広く名人と交際し連歌会を主催したりと活躍したようです。

運に恵まれた面もあったのでしょうが、やはり当時の一流の人物だったようです。