爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「楽天が巨人に勝つ日 スポーツビジネス下克上」 田崎健太著

スポーツものを中心に執筆をしている田崎さんが2008年にスポーツビジネスについて書いた本です。
つまり、2013年のあの楽天の優勝を見ずに書かれています。まさか5年後に実際に形として「楽天が巨人に勝つ」という結果が出るとは、著者の田崎さんもその当時は信じられなかったでしょう。

楽天が巨人に勝つ」といっても著者の意図は「ビジネスとして」という点についてのところにあります。
旧来のプロ野球ビジネスというのは巨人を中心として営々として作り上げられてきた体制に寄りかかって成立してきました。それはテレビの放映権収入を一番の収益源として残りは親会社の非課税扱いとなる広告宣伝費の流用というもので補填するというものです。そのためにテレビ中継が少なく巨人戦もなかったパリーグでは特にチームの経営が難航し、それがとうとう近鉄の廃業ということになってしまいました。
しかし、巨人体制にしてもどんどんと野球離れが進んでしまい、中継放送の視聴率が低下してしまい、放送も減ってしまいました。象徴的だったのは2007年に巨人がリーグ優勝を決めた試合も中継されなかったという事態でした。
そんな中で、近鉄はもはや存続も不可能となり思わしい継承スポンサーも無いということで廃止の方向だったのですが、ライブドア、ついで楽天が名乗りを上げすったもんだの挙句楽天ゴールデンイーグルスが誕生したのでした。

しかしそのような生れだったからこそ従来のプロ野球経営手法に毒されずに独自の(しかし一般から見ると真っ当な)経営を行うことができ、立ち上げ後速やかに健全経営に移行できたと言うことです。
それはとにかく地元を盛り上げて来場者を増やし、さらに地元の資金を集めて広告収入などを得ていくということに尽きるようです。また、従来は球団運営会社と球場会社とはまったく別で球場使用料も払い、さらに広告料も球団には入らないと言う体制を変え球場も球団が使用権を獲得することでさらに営業しやすくするという、これも傍目から見ると当然の対応を目指したそうです。
これらの運営には楽天の野球などのスポーツ事業にはまったく縁の無かった社員が担当して実施されたそうです。だからこそちゃんとできたということなのかもしれません。
今までにも球団の「ファンサービス」と言う活動はどこのチームでもやっていたようですが、これを楽天は「ファンエンターテイメント」と変えて対応しました。ファンサービスなどといった上から目線のやってやる態度では駄目だと言うことです。目指すは東京ディズニーランドだとか。
とはいえ、本書執筆の時点でも決して楽天も黒字経営というわけではなく、とくに球場の改装費なども負担するために厳しいそうですがさらに地元重視で実際に見に来てくれる観客を楽しませると言う方針で行くと言うことです。

スポーツビジネスと言う話で、さらに本書では福岡ソフトバンクホークス千葉ロッテマリーンズ四国独立リーグ浦和レッズなどが扱われています。どれも地元の観客重視の政策をとり、観客を集め、テレビ放映権はあまり計算しないと言うのは共通のようです。

それにしても、こういった新しいビジネスプランをとったチームがそれぞれ成績でも成功を収めるようになったと言うことはすばらしいことなのかも知れません。