爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「東京・同時多発テロ」林信吾著

ジャーナリストの林さんが日本でテロの起こる可能性について論じたものです。
アメリカやヨーロッパなどではテロの事件が起こることがありますが、日本ではオウムの事件以降はないようです。近年のようにイスラム教徒がテロ事件の主役となることが多いために、外国人が目立つ日本ではやりづらいという状況でやや安心されているようだが、それは本当だろうかという問い掛けです。

この本は2005年の出版ですので、当時のイラク戦争などとの関わりを見ると決して安心できないというばかりでなく、世界の世論の情勢から見てもあまり関係の深くないような日本を狙うということの意味も有り得るということで、十分に危険性を持つということです。

実際に狙われることになったら、日本は至る所にターゲットがありそうです。都会では人間を狙ったテロのほかに、通信網などを狙うという手段もあり、日本全体への打撃ということを考えるならば多くてもせいぜい数十人の人を殺傷する爆弾テロよりは地下ケーブルなど通信網の破壊の方がはるかに容易でしかも経済への影響は大きいというものです。

なお、この本は福島以前の話ですので、原発に対するテロは以前の常識に従っていてさほど心配は要らないということになっています。格納容器を直接攻撃してもほとんど傷もつかないということですが、事故以降はそれが全く違っていたことが明らかになりました。冷却装置だけ破壊してほんの数日立て篭もればあとは原子炉の方で勝手に爆発してくれるということが分かってしまった今では、そちらの方が危険なことは明らかですが、著者の意見はどうなのでしょうか。

「テロとの戦い」ということを声高に叫び、アメリカなどでは相当な対策をしています。それが過剰なほどではないかとも見えますが、一方日本ではその備えがまったく見られず国防というと今までどおりに高価な戦闘機や護衛艦ばかりに使っているようですが、対テロの国防も考えるべきというのが著者の意見であり、しかもそれは戦闘機を数機振り替えるだけでも進められるというものです。
また、全国的なテロ事件が起きたとすると現行の都道府県警察の枠組みではまったく無力ということで、はやく全国的な警察組織を作る必要があるということです。自衛隊の一部の活用も有り得るそうです。
中国だけが仮想敵という方向ばかりを強調するような現政権に考えて欲しいところです。