爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

エネルギー文明論「エネルギー”政策”として取り得るのは”エネルギー使用の削減”だけ」

東京都知事選では原発即時廃止をうたった細川・宇都宮の各候補は得票が伸びず、原発問題については終始態度をぼかしたままの候補が当選してしまいました。
原発事故に対する危険性はさらに増したかもしれませんが、実は問題点はそこより大きいものがあります。

原発廃止であっても再稼動は容認であっても、その方策として挙げられているのはせいぜいが、省エネの徹底と代替エネルギーの開発くらいのものです。それで大丈夫と思っているのでしょうか。
原発停止後、休止していた火力発電を稼動させているために燃料輸入が急増しました。そのために石油などの輸入が増え、ただでさえ石油価格が高騰している折から国全体の貿易収支も毎月数千億円といった巨額の赤字を出しています。貿易赤字というものはすぐに危ないというものではないそうですが、いずれは大きな問題になるのは必定です。

それでは原発を稼動させればこれは防げるのでしょうか。実は石油供給はすでに能力のピークを超えているという「オイルピーク説」というものがあり、欧米では認識度が上がっているようです。エネルギー供給の問題にはより敏感であるべき日本ではあまり注目されていないのは不思議なほどですが。
それによると、石油の供給はピーク以降は徐々に減りだし、需要が減らない以上はその価格がどんどんと高騰していくというものです。原発を稼動させたところでその他の用途に用いる石油は減るわけではありませんので、いずれは大きく収支が赤字に振れるのも間違いありません。

その対策として、省エネの徹底は当然なのですが、代替エネルギー開発はどうでしょうか。これも政府が多額の研究費や補助金を出して推進しようとしていますが、現在それに参入してきているのは目先の金儲けが目的としか思えないようなところばかりです。
太陽光発電にしろ風力発電にしろ、本当に有望な分野であるなら補助金の有無に関わらず多くの研究者や開発企業が群がるはずです。今の状況はとてもそのレベルの話ではありません。

政府の行うべき本当の「エネルギー政策」はエネルギーを多く使う産業をできるだけ早く国外へお引取り願うということです。こんなことは日本の経済を落ち込ませると言ってほとんどまともに考えられていませんが、現在やるべきことはこれ以外にはありません。
このままで行けば、どれだけ輸出産業で儲けようともそれ以上にエネルギー代金を払うだけの経済構造になってしまいます。もはやかつてのような石油1バレル10ドル以下といった状況に戻るはずもなく、桁違いのエネルギー価格でやっていかなければなりません。
理想的に言えば、頭脳産業といった分野だけで食っていく国というのが良いのでしょうが、手工業なども許されるでしょう。そのような産業構造にできるだけ早く移行させるというのが政府のやるべきことなんですが、まあ無理でしょうね。