爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「地名の社会学」今尾恵介著

民間で地名などの研究を進め、現在では日本地図センター客員研究員という今尾さんが書かれた地名をめぐる社会学的考察の本です。
自然地形から由来した地名では「はけ」または「はげ」と言う地名が数多くありますが、それぞれ様々な当て字がしてあるので、場合によっては元の意味が分からなくなってしまったことも多いようですが、これは「剥げる(はげる)」に由来しており、崩落しやすい断崖を表したところから来た地名です。熊本市には八景水谷というところがあり、なんと読むのか知らない人には難しいのですが、これが「はけのみや」と読むと分かれば、地名の由来も分かると言うものです。

また、台地のわずかな高低を「くぼ」という地名で表すことも多く、東京の郊外には昔から数多くあったようですが、宅地化が進むことでその意味も失われ、地名も失われることが多いようで、○○台といったおかしな地名に変わる事があるようです。
しかし、町名などからは消えてしまっても結構バスの停留所名で残っていることがあるようで、今となっては由来も分からないようなバス停が数多く続いている場合があるそうです。

そのような小さな町の地名は昭和37年施行の法律による「住居表示」で大きく失われてしまいました。そこには社会学的、民俗学的な考察は全く為されず、単に効率的かどうかしか考えない為政者によって実施されたためにめちゃくちゃになってしまったようです。

少し大きな市町村名は明治・昭和・平成と何度も訪れた市町村大合併でボロボロになりました。最近の平成の大合併でおかしな名前の自治体が続々とできましたが、実はそこでなくなった市町村名も明治や昭和の合併時に無理やり作った名前のものがあり、別に歴史的地名というわけではなかったものもあるようです。(津田沼や更埴など)
とはいっても今回発生した、奥州市甲州市、瀬戸内町、南九州市などは市町村の範囲を大きく越える名前をつけており、暴挙と言うべきでしょう。

そこで、今尾さんの提案としては、1必ず歴史的地名を選ぶ 2中心都市の名を選らぶ 3地名の本来の守備範囲を維持する 4安易に仮名を使わない 5東西南北や中央は使わない と提示されています。まさに正論でしょう。