日本全国には、鉄道の駅というものが1万以上あるそうです。
その名称は、単にその駅の所在地の地名を付けたというだけではなく、地元の事情、鉄道会社の思惑など、いろいろなものが絡み合ってできています。
そのような駅名、実例を多数あげて説明されています。
JRなどの「東京」駅。
大都会東京の玄関口として多くの列車が行き来しています。
しかし、「東京」といえば都市としての名称、行政区分の「東京都」、など非常に広い地域を代表する名前です。
それがあの駅の名前として付けられたわけです。現在ではそれに疑問の余地はありませんが、最初からそうであったとも言えないでしょう。
もっと小さな区域の地名を取って「丸の内」でも良かったのかもしれません。
日本ではじめての鉄道は明治初年に新橋と横浜の間で開通しました。
その東京側の出発地を「東京」と名付けても間違ってはいなかったでしょう。
しかし、そこを「新橋」としたのは、鉄道建設の指導役として招聘したイギリス人技術者の「ロンドンにロンドン駅なし、パリにパリ駅なし」という意識があったようです。
ロンドン市には、「ロンドン」と名付けられた駅は無く、各地の名前が付けられています。(ヴィクトリア、パディントン、ウォータールー等)
その時はイギリス流で出発駅を「東京」とはしなかったのですが、その後認識が変わったようです。
特に私鉄の場合に顕著なのが「駅名でお客を呼ぶ」意識です。
これは日本の特徴とも言えるのですが、「前」のつく駅名が多いということがあります。
欧米ではまず見当たらないこの「前」付きの駅名。
全国で300以上あるそうです。
あえて、公共施設や商業施設、学校などの名称に「前」をつけることで、利用者の利便性を高めるという鉄道会社の意識があるようです。
各地にあるのが「市役所前」、「大学前」、ですが、悩みもあります。
その施設が無くなったり、名称が変わった場合に駅名をどうするかという問題が発生します。
鹿児島市電の「県庁前停留場」は、県庁が移転してしまったために「県庁跡」に改名したとか。
また、「前」は付いていないものの、東急東横線の「学芸大学」駅は、「碑文谷」「青山師範」「第一師範」「学芸大学」と何度も改称せざるを得ないことになりました。
しかも、現在は学芸大学は移転してしまい存在しない学校名ですが、駅名だけは変えられません。
駅名としては駅の所在地の地名を名乗るのが原則ですが、平成の大合併で市町村が多数合併し、新しい名称を名乗っています。
ただし、今回の合併では新自治体の名称が非常に大きい範囲を示すものになった例が多く、駅名はさすがにそれに追随するわけには行かないようです。
旧国名を新しい市の名前としたものも多く、その自治体が旧国の中心というわけでもないために、市名を駅名とすると不都合が生じます。
たとえば、北陸本線武生駅を「越前駅」、飛騨古川駅を「飛騨駅」、修善寺駅を「伊豆駅」などとしてしまうと、多くの関係者に異論が続出しそうです。
新たな駅ができた時に、そこがどの地域を代表するか、簡単ではない場合が多いようで、その妥協案?で地名をつなげてしまうということが最近では頻発しています。
これも「民主主義」の影響でしょうか。
大阪の地下鉄はそれがもっとも実感できる例であるようです。
太子橋今市、四天王寺前夕陽ヶ丘、駒川中野、喜連瓜破、西中島南方、ドーム前千代崎、今福鶴見等々です。
福岡市営地下鉄の「千代県庁口」もその一種のようですが、実際にこの路線に著者が乗ったところ車内放送で「県庁・県警察本部へは、次の馬出九大病院前が便利です」と言われたとか。ここまでくるとブラックジョークのようです。
ただ電車に乗っているだけでは見落としてしまいそうな「駅名」の謎。結構面白いものかもしれません。