爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「改憲問題」愛敬浩二著

名古屋大学法学教授の愛敬さんが憲法改正についての様々な意見を大学学生の討論を模した様式で解説したものです。
とはいえ、この本の出版は2006年ですので、実は前回の改憲騒ぎのときのものです。しかし、騒ぎの程度はさらに大きくなってきたとはいえ、内容にはほとんど変化は無いと言えるようですので、この本の指摘は現在でもまったく妥当だと言えそうです。
一番に来るのはやはり「押し付け憲法論」でしょうが、その実態は諸説ありそうですし、なによりも「押し付け」だから改正しなければならないと言うことにはならないでしょう。あくまでも内容で話をすべきところをこういった点を捉えて主張してくるのがいかにも本音を隠す改憲論です。
改憲論はタブーであったというのもよく言われることですが、かなり早い時期から常に改憲の動きが出されており、タブーなどと言う状況ではまったくありません。これも改憲反対論者を牽制するだけのテクニックでしょう。
また、特に9条関連で自衛隊と戦力云々の部分を「神学論争」と揶揄し、現実を見るべきと言う論法も多々あります。これが実はこの本の出版時に問題であった当時の小泉首相の論法でもあります。これももちろん神学論争が高尚であるという意味で使われているのではなく、言葉遊びをしていると批判しているのにほかなりません。しかし、問題は言葉を選ばざるを得ないようにされている事実であって、論争にあるのではないと言うことです。

こういった論争の表面に左右されること無く、何をどう変えたいのかと言う真意を見抜けば改憲に対する態度も決められるということです。

現首相は小泉よりさらに改憲願望が強そうで、参院選挙後にはさらに動きを強めるかも知れません。尻馬族の評論家もぞろぞろと出てきており、そういった連中の手の内もすっきりとわかるようになった気がします。