辻村さんの本は最近も「ポジティブ・アクション」という、男女間格差を是正する動きについてのものを読みました。
憲法学・比較憲法学・ジェンダー法学といったものが専門ということですので、この本もその中心的なものかもしれません。
この本が出版されたのは2014年、安倍政権が再開し改憲論を盛んに表明していた頃で、あたかも「世界では・・・」という言葉を出して日本の状況がおかしいかのような言い方がされていたものですが、それを黙って見ていられなかったようです。
各国の憲法を詳細に検討してきた著者から見れば、そのような言い方は各国憲法を正確に比較することなく、自らの主張を少しばかり正当に見せたいだけのようであったのでしょう。
そのような立場から、まず本書では「改憲手続きの比較」から始まっています。
日本では改憲手続きが困難になるようにされているためにこれまでも改憲できなかったかのように論じる者がいたため、それを正確に論破しています。
さらに「憲法改正の限界」があるのか。
そして公務員や政治家には「憲法尊重擁護義務」は無いのか。といったところも各国と比較します。
今の憲法はアメリカ占領軍の「押しつけ」であるというのは相変わらず主張されている点ですが、これについても新たな視点、つまり明治時代に国民に頭の上から文字通りに「押し付けられた」大日本帝国憲法が決まる以前、民間で多くの憲法案が出されたのですが、それを再発見し日本国憲法につなげたという見方もできるということです。
さらに憲法における「人権規定」を自民党の憲法改正案ではいかに骨抜きにしようとしていたか。
また戦争放棄については各国はどのように扱っているかといった方向で進めていきます。
戦争放棄は日本国憲法が世界に先駆けて取り入れたのですが、その後多くの国でそれにならった規定が設けられ、実際に軍隊を放棄している国もいくつも出てきているようです。
戦争放棄を初期にうたった日本が結局は世界でも有数の軍備を備えるようになったのとは大違いです。
その後、憲法を実際に変えようという動きは鈍くなっていますが、憲法には手を付けずに好きなだけ解釈を変えるということはさらに激しくなっています。
世界各国の憲法を知っておくということはさらに重要になっているのでしょう。