爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「海の都の物語2」塩野七生著

ヴェネツィアについての連作その2で、いわゆるベニスの商人について、そして一貫して行われた共和政治の政体について記されています。
シェークスピアにはオセロとヴェニスの商人という、ヴェネツィアを扱った2作がありますが、どちらもヴェネツィアの実情とはまったく異なる表現をされており、偏見をもって見られていたということが判るということです。
ヴェニスの商人の主人公アントニオはヴェネツィア人という設定ですが、それがあのような無謀な借金をすることはあり得ず、危険を分散すると言う商人なら忘れてはいけない対策もせず、というのが本当のヴェネツィア商人だったようですが、確かにそれでは全く物語の筋書きにはなりません。見ていて面白くもなんとも無いのが商人だったようです。

政体についてはヴェネツィアはナポレオンによって滅ぼされるまでずっと共和国として続いていきました。共和政体といっても、民主選挙によるものではなく、有力者による合議制ですが、それでも独裁者が王制に移行するという数回の危機を乗り切り、共和制を守ってきました。そのための各種制度もよく考えられたものだったようです。
上から、つまり宗教の側(法王)からの圧力もあり、また下から、民衆の側からのものもあったようで、特に民衆側のものは膨大な欲望をコントロールできなくなると言う危険性があるというのは、現在の民主政治も全く同様で、今行われている選挙でも損得のことばかり言う候補者がほとんどであると言うのは、人間は全く進歩していないことを示しているようです。