爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「春秋名臣列伝」宮城谷昌光著

春秋時代とは中国の周の時代の後半、笑わぬ后を笑わせようとして国を滅ぼした幽王までを前半とすると、それから何とか国を建て直したものの、徐々に王朝の力は衰え、諸国の抗争が激しくなり、最後は秦の始皇帝が統一するまでの春秋戦国時代の前の部分に当たります。
この言葉の元となった魯の国の歴史の春秋という書物など、あれこれの記録が残っているので徐々に当時の状況を想像できるようになるという時代でもあります。
宮城谷さんはデビュー作こそ異なる時代のものであるけれど、直木賞を取り飛躍の一歩となった「夏姫春秋」を始め、初期の大作には春秋時代を扱ったものが多いように思います。その中で、臣として活躍した人々を短くまとめたものを並べたもの(列伝)がこの本にあたります。
中にはすでに大作に仕上げられている、管仲、子産、晏嬰などのものもありますが、どれも約15ページずつに略記されています。それで過不足ないように思わせるというところも作者の技でしょう。

その中に、衛の蘧伯玉のように他の文中に少しずつ引用されていながら、本人の具体像がまとまらない人がいます。これはどうやら衛が戦国時代のごく早い時期にすっかり国力を落とし滅亡してしまったからのようで、衛は早い時期にはなかなか見るべきところがあったようなので残念なことです。歴史に名を残すといっても本人の業績もさることながら、国や続くものの繁栄というものも必要条件のようです。